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エバー航空スト続行、7月のダイヤ回復困難


ニュース 運輸 作成日:2019年7月1日_記事番号:T00084345

エバー航空スト続行、7月のダイヤ回復困難

 長栄航空(エバー航空)の客室乗務員によるストライキは29日、スト参加者への処分を巡る意見対立から労使交渉が決裂、当面継続されることとなった。同社は、これにより7月末までに運航ダイヤの正常回復は不可能になったとの認識を示した。1日付自由時報などが報じた。

/date/2019/07/01/00top_2.jpgスト収束の兆しは依然見えない。エバー航空のブランド信頼感は今回の事態を通じて大きく低下してしまった(29日=中央社)

 同社の客室乗務員が加入する労働組合、桃園市空服員職業工会(桃空職工)は29日、会社側の新規6項目の提案を受け入れ、労働協約を結んだ上でストを終わらせることをスト参加者の投票を経て決定していた。しかし会社側は、ストが始まった20日にフライトの準備に入っていながら職場を放棄した18人の従業員に対する処分問題などで譲歩せず、労使交渉は再び暗礁に乗り上げた。あす7月2日に改めて交渉が行われる。18人への処分が不当労働行為に当たるかは、労働部の審査が必要で一定の時間がかかる。組合側も譲歩しない姿勢だ。

スト参加者に圧力

 エバー航空は30日、スト参加者に対し、復職意欲調査のショートメッセージ発信を取りやめ、今後は勤務表の変更通知に従って出勤するよう呼び掛けた。6割前後の輸送量を長期的に確保できるとみられる中、業務復帰を拒む従業員は職場放棄と見なすとの圧力を掛けたとの見方が出ている。同社の規定では、職場放棄が3日続けば免職となる恐れがある。

 同社はまた、既に300人のスト参加者が、旅券などを組合から取り戻し、会社側に職場復帰の意思を伝えたと表明した。一方、桃空職工によると、労使交渉決裂後に旅券などを組合に預けたスト参加者を再集計したところ2,250人で、離脱者は100人となる。30日にストを離脱した参加者からは「ほっとした」との声も聞かれた。ただ、同日も依然、桃園市南崁区のエバー航空本社前では数百人が座り込みを続け、組合幹部が「戦いは始まったばかり」と気勢を上げた。スト継続の誓約書を提出した参加者は1,000人近くに上るという。

過去最大のストに

 エバー航空は同日、スト開始から累計約1,000便の運航が中止され、7月10日までに2,000便に達し、延べ20万人の旅客に影響、売上損失は21億1,000万台湾元(約73億8,000万円)に達したことも発表した。1日も76便の運航を中止する。

 今回のストは台湾航空業界で、日数、参加者数、欠航便数、影響を受けた乗客数、売上損失額がいずれも過去最大となった。労働部の劉士豪政務次長は30日、労使双方に対し、できる限り早期に労働協約を結んでストを終わらせるよう呼び掛けた。

旅行業界が抗議声明

 労使交渉決裂に対し、旅行業界からは強い失望の声が上がった。業界団体、中華民国旅行商業同業公会全国聯合会(旅行業全聯会、TAAT)は、旅行会社は航空機の振り替えや宿泊費の立て替え費用などで業界の損失額は20億元を上回っており、数千人規模の抗議デモを行うか2日に検討するとの声明を発表した。また、エバー航空は旅客1人当たり2,000元の賠償を行うべきとしている。

 旅行業界にとって、今回はストが宣言からわずか2時間後に始まったことが損害拡大の要因となっており、蕭博仁TAAT理事長は、運輸業は公共の利益に鑑み、少なくとも15日のスト予告期間を置くべきと主張している。許銘春労働部長は、エバー航空のストが一段落した後、議論を通じて社会の共通認識を求めたいとの考えを示した。