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日本の対韓輸出規制強化、iPhone出荷遅延懸念


ニュース 電子 作成日:2019年7月5日_記事番号:T00084448

日本の対韓輸出規制強化、iPhone出荷遅延懸念

 日本政府が元徴用工問題などを念頭に4日、韓国に対して半導体と有機EL(OLED)関連の重要化学品3品目の輸出規制強化を実施した。業界では、9月に発表されるとみられるアップルのiPhone新機種向けに韓国メーカーが供給する有機ELパネルの生産が滞れば、組み立てを担う鴻海精密工業、和碩聯合科技(ペガトロン)など、台湾メーカーを含むサプライチェーン全体に影響が出かねないとの懸念が高まっている。5日付経済日報などが報じた。

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 iPhone新機種向けの有機ELパネルは、韓国のサムスンディスプレイ(SDC)、LGディスプレイ(LGD)が主に供給しており、生産に影響が出ればiPhone全体の量産スケジュールが遅延する可能性がある。アップルのサプライヤー上位200社のうち台湾企業は46社と最大を占めており、デジタルカメラ用レンズの大立光電(ラーガン・プレシジョン)など台湾の部品メーカーへの影響も懸念される。

台湾半導体産業に有利

 一方、韓国のサムスン電子とSKハイニックスは、アップルにDRAMを供給する主力メーカーだ。台湾の経済部や専門家は、台湾と韓国は半導体産業で競合しており、台湾メーカーの転注獲得に有利と楽観的な見方を示した。

 工業技術研究院(工研院、ITRI)産業科技国際策略発展所(産科国際所)の楊瑞臨(レイ・ヤン)研究総監は、台湾DRAMメーカーの世界出荷比率は高くないため、影響は小さいと指摘した。台湾のDRAM大手▽南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)▽華邦電子(ウィンボンド・エレクトロニクス)▽旺宏電子(マクロニクス・インターナショナル、MXIC)──が恩恵を受けるかは、川上の受注状況次第だと分析した。

台湾転注、認証取得が障害

 日本政府は4日から、▽有機ELの生産に使用されるフッ化ポリイミド▽半導体などの製造に不可欠なレジスト(感光材)▽フッ化水素(エッチングガス)──の韓国向け輸出に際し、従来の包括許可を取りやめ、個別許可のための審査を課した。これら重要化学品3品目は世界シェアの7~9割を日本製が占め、韓国の今年1~5月の輸入に占める日本製比率は▽フッ化ポリイミド、93.7%▽レジスト、91.9%▽フッ化水素、43.9%──と高く、供給断絶の懸念が高まっている。韓国メディアによると、サムスンは1カ月分しか重要化学品の在庫を確保していない。SKハイニックスは約3カ月分まで積み上げる考えだ。

 同期間の輸入のうち台湾製の割合は、▽フッ化ポリイミド、3.9%▽フッ化水素、9.7%──だった。台湾メーカーは受注拡大が期待できるが、新規供給の場合、韓国メーカーから認証を獲得する必要がある。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、早ければ8月にも工作機械や真空ポンプなどの韓国への輸出優遇措置が取り消される可能性があると伝えた。日本政府は、輸出管理の優遇措置を与える安全保障上の友好国「ホワイト国」のリストから韓国を外す方針で意見募集手続きに入っており、サプライチェーンへの影響はさらに拡大する可能性がある。

【図】