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1千人以上の父親代わり、「孩子的書屋」創設者が死去


ニュース 社会 作成日:2019年7月5日_記事番号:T00084471

1千人以上の父親代わり、「孩子的書屋」創設者が死去

 台東で、貧しい家庭の子供に勉強や音楽を教えたり、食事と居場所を提供してきた民間施設「孩子的書屋(子供の書斎)」の創設者、陳俊朗氏が4日心筋梗塞で倒れ、帰らぬ人となった。55歳だった。1,000人を超える子供の成長に関わり、「陳爸(陳パパ)」と呼ばれ、広く尊敬を集めていた陳氏の早過ぎる死去に、各界から惜しむ声が上がった。

/date/2019/07/05/20home_2.jpg巣立った子供たちは「陳爸、いつまでも大好きだよ」と涙にむせんだ(4日=中央社)

 陳氏は若い頃はけんかに明け暮れる非行少年だった。高校卒業後は台北市でカラオケ店の用心棒や、アダルトショップやナイトクラブの経営など、さまざまな仕事を経験した。仕事の忙しさから家庭崩壊の危機に直面し、妻と子供との生活をやり直そうと故郷の台東に帰ることを決意した。

 当初は貯金した500万台湾元(約1,700万円)を基に、台東でもアダルトショップやナイトクラブを開こうと考えていた。しかし、親が県外に出稼ぎに出ているため十分な愛情を受けられず、食事も満足に取れない子供が大勢存在することを知ったことから、2000年に「孩子的書屋」を開設し、子供の勉強に付き添ったり、食事を提供するようになった。

 孩子的書屋はスポーツを通じた教育にも力を注ぎ、子供たちに自転車やカヌーによる台湾一周に挑戦させ、メディアに取り上げられたこともあった。

 今や孩子的書屋は10カ所に増え、年間在籍者は300人、これまでに巣立った子供は1,000人を超えた。子供たちは成長後に「孩子的書屋は大きな家族のようだった。社会に出て挫折に直面した時、最初に思い出したのは陳爸のことだった」、「陳爸が面倒を見てくれなければチンピラになっていた」などと感謝の気持ちを語った。

 孩子的書屋は教師の給与や食費など、運営費が月300万元に上るため、陳氏は早々に貯金を使い果たし、その後は寄付金で運営を続けていた。常に募金活動で各地を駆け回っていたため、心身に疲労が重なり、医者からは「こんな生活を続ければ心臓カテーテル治療が必要になるよ」と警告されていたという。

 陳氏は4日午前9時ごろ、心臓に痛みを訴え、病院に向かうため靴を履こうとしたところで意識を失って倒れ、緊急搬送されたものの死亡が確認された。

 死去を受けて「孩子的書屋」のフェイスブック(FB)ページには陳氏への追悼とともに「孩子的書屋の仲間は、陳爸の精神を忘れず、自らの責任を果たし、志を遂げる」と誓いの言葉が記された。