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鴻海の自主開発8Kスタジオ、運用開始


ニュース 商業・サービス 作成日:2019年7月12日_記事番号:T00084579

鴻海の自主開発8Kスタジオ、運用開始

 鴻海精密工業が傘下のシャープと設備を共同自主開発した、台湾初となる8Kでの超高画質編集に対応した映像スタジオ「t.Studio」の運用が11日始まった。8Kコンテンツの自主制作が世界でもまだ日本放送協会(NHK)などに限られる中、台湾でも8K番組制作が始まることになる。今後の8K対応テレビの普及拡大や東京五輪での8K放送を見据え、日本などの放送局向けの8K設備商機獲得も狙う。12日付経済日報などが報じた。

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 「t.Studio」は、鴻海副総裁の呂芳銘氏が董事長を務めるケーブルテレビ業者、台湾寛頻通訊顧問(TBC)の出資で完成した。200坪の大型撮影スタジオ1カ所、50坪の中型撮影スタジオ2カ所を備え、合計20台の4K対応カメラと4K対応の副調整室を備える。

 また、鴻海とシャープが自主開発した世界初の8K対応ワークステーションを設置した。8Kによるデータ量・演算量の増加に対応する▽インテルのx86サーバーによる高性能計算(HPC)▽8K対応ストレージ(記録媒体)▽最新のトランスコード(データ変換)対応ソフトウエア──により、▽中継▽ストリーミング▽ポストプロダクション(編集)▽保存──の各段階で4Kと8K映像の処理に対応する。

 観測によると、スタジオと制作・放送設備への投資額は、4K部分のみで2億台湾元(約7億円)を超え、8K部分は鴻海が提供したとされる。

自主開発でビジネスモデル転換

 呂副総裁は、8K対応ワークステーションは、シャープと傘下のアストロデザインの協力の下、鴻海グループ内で設計から製造まで全て自主開発したと説明した。鴻海は既にアストロデザインを通じて日本のテレビ局に8K用設備を供給しており、東京五輪の放送での活用が見込めると明らかにした。

 呂副総裁はまた、これまでの▽EMS(電子機器受託生産サービス)▽JDM(共同設計生産)▽ODM(相手先ブランドによる設計・生産)──からIDM(イノベーション・設計・生産)へとビジネスモデルの転換を進めている成果と強調。同社がブランド顧客のみを相手にする時代は終わったとの見方を示した。

台湾映像産業の復興目指す

 呂副総裁はさらに「t.Studio」により▽ハイテク業界▽メディア界▽文化界──が手を携え、台湾の8Kでの制作・放送技術を底上げし、8Kエコシステムを構築していくと述べた。台湾の映像制作業界で続いていた人材流失を食い止め、産業の再興につなげたい考えだ。

 TBCの余宗芸董事長は、来年の東京五輪に向け8K対応テレビは増加するが、番組制作技術と設備は追い付いていないと指摘した。ソフトウエアによる8K画質への疑似変換では視聴者は満足しないとして、「t.Studio」により番組制作の品質・技術の向上が図れると期待を示した。

 市場調査会社、IHSマークイットの予測によると、2019年の8K対応テレビ出荷台数は43万台で、20年には200万台に拡大するとされる。その一方、8Kでの番組制作は世界的にも少なく、コンテンツ不足が懸念されている。

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