ニュース 社会 作成日:2019年7月12日_記事番号:T00084600
103世帯289人が暮らす桃園市観音区の樹林新村では、過去数年間に死亡した住民のうち77%の死因が「がん」で、その比率は台湾全土平均の28%を大きく上回る。この村は東、西、北の三方を観音工業区に囲まれており、工場の排煙ががん罹患(りかん)率の高さの原因と指摘する医師もあり、住民らは市政府に村の移転を要望しているが現時点で進展はない。
樹林新村は1950年代に台湾北部の主な水源となる石門ダム(桃園市、新竹県)が開発された際、周辺地域に暮らしていた住民が移転して作られた村だ。その後、80年代に入り観音工業区の開発が始まり、632ヘクタールにわたる農地が工場へと姿を変えた。
現在、化学工業関連を中心に360棟の工場が日々操業しており、煙突からは昼夜を問わず化学物質が排出されている。しかも排気規制を守らない工場も多いようで、半数に「大気汚染防止法」違反などの摘発歴があり、中には31回に上る工場もある。
このための三方面で観音工業区と境界を接する樹林新村の住民からは「頭が痛くなるような悪臭が漂ってきて眠れない」「村から出ると空気が甘く感じる」といった声が聞かれる。
村の中にある小学校も工場群から100メートルも離れていないためか、手足のかゆみを訴える児童がいる。同村ではこうした環境もあって人口流出が進んでおり、この小学校でも児童は101人に減少した。
過去8年間に死亡した樹林新村の住民22人のうち17人ががんだった。しかも9人が55歳以下の若さで、がんの種別では肺がんが最多の35%を占めた。一方、台湾全土ではがんによる死亡は全体の28.2%にとどまっており、小規模なデータとはいえ樹林新村の数値は突出して高い。
胸腔(きょうくう)疾病の専門家、蘇一峰医師は、がんは生活や飲食習慣が原因で、単純に樹林新村の罹患率の高さをその環境に帰することはできないが、有毒化合物の刺激を受けて細胞が破壊と修復を繰り返すことで遺伝子が損傷を受け、がん細胞化するリスクはあると指摘。「村の住民は死に神と暮らしているようなものだ」と語った。
樹林新村では人口流出と高齢化が進み、現在、住民の多くは高齢者や原住民、新住民(90年代以降に主に東南アジアから台湾へ移住した人々)となっている。こうした人々が少しでも快適で健康的に暮らせるよう、せめて工場の規制違反には厳しい監視の目を向けてもらいたいものだ。
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