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「残された者の心も整理」、遺品整理士に脚光


ニュース 社会 作成日:2019年7月25日_記事番号:T00084831

「残された者の心も整理」、遺品整理士に脚光

 65歳以上の人口比率が14%を超え、既に「高齢社会」に入った台湾では高齢者を対象とする新たな職業が生まれている。「遺品整理士」もその一つだ。この仕事の依頼者は、亡くなった親族に対する思いが断ち切れない者が多く、遺品整理士が本人に代わって遺品を片付け、故人が抱えていた気持ちを伝えることで、残された者は執着が消えて生きやすくなるという。

 これまで遺品整理士として20件以上の案件を引き受けてきた廖心筠さんは、かつて収納アドバイザーとして働いていたある日、依頼を受けて3世代が同居する家庭に赴いた。そこで80代のおばあさんが、50年間も整理をしていなかったという洋服ダンスを片付けていた際、奥から1枚の古いセーターが見つかった。おばあさんは「これは母が買ってくれたものよ」と手に取り涙を流した。

 セーターには母親からプレゼントされたという貯金箱が包まれていた。おばあさんから「ありがとう、死ぬまで見つからないと思っていたわ」と感謝の言葉を掛けられた廖さんは、初めて「物が人を生まれ変わらせることができる」と感じ、これ以降、遺品整理の仕事を引き受けるようになった。

 廖さんは、遺品整理の依頼者には、恨みか愛情かにかかわらず、亡くなった者に対する強烈な思いを捨て切れない人が多いと語る。

 愛人だった母親の養子として姉と共に育てられた依頼女性は、母親から主人の不在時に暴行を受けるなど虐待されたため、成人するとすぐに家を出て、定期的な仕送り以外は親子関係を断った。

 母親が亡くなった後も、空き家となった実家を10年以上にわたって放置していたが、ついに廖さんに整理を依頼した。

 廖さんと共に実家に入った女性は、五つあるタンスに衣類がいっぱいに詰まっている光景を目にするや、「仕送りした金を無駄遣いして」と腹立たしそうにつぶやいた。しかし化粧台の引き出しには、親子3人の写真が大切に保管され、タンスから子供服を含む新品の衣類が大量に見つかり、母親が娘たちを愛し、家族を連れて帰省することを心待ちにしていた様子がうかがい知れると、その場で泣き崩れた。

 廖さんは遺品整理士の仕事について「遺品だけでなく残された者の心も整理すること」と語っている。