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株安危機、行政院が8項目の対策措置


ニュース 金融 作成日:2008年6月30日_記事番号:T00008489

株安危機、行政院が8項目の対策措置

 
 政権交代後、株価が2割近く下落したことに市民の不満が高まっていることを受け、劉兆玄行政院長は27日、景気対策専門小委員会の設置を指示した。同委員会は初会合で、保険業界の資金約8兆台湾元(約28兆円)の市場投入を促すことなど8項目の株価対策措置を決めた。しかし、国際原油価格の高騰による景気減速の懸念から、株価は世界規模でさらに下落するという観測もあり、政府の措置は「焼け石に水」になるとの懸念も出ている。週明け30日の株価は引き続き下落した。30日付工商時報などが伝えた。
 

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馬英九政権の誕生で株価が上昇するという個人投資家の期待は、全く裏切られてしまった。「馬総統が株をやらないせいだ」という八つ当たりの恨み節も聞かれる(中央社)
 
 景気対策専門小委員会は邱正雄行政院副院長を座長とし、毎週1回会合を開く。27日の会議では、▽政府系4大基金(公務人員退撫基金、労工保険基金、労工退休基金,郵儲基金)による株式の長期保有▽上場企業への自社株買い奨励▽保険業者の資金約8兆元の、株式市場および「愛台12大建設プロジェクト」への投入促進▽生保業者に株価指数連動型上場投資信託(ETF)購入を促すための、リスクベース自己資本比率(RBC)のリスク係数調整▽上場企業への業績発表会の実施励行による、台湾株式市場の信用度向上──などの8項目を景気対策として採択した。

 このほか、国家安全基金からの資金投入も選択肢として検討する。同基金については7月5日の定例会合で対応を協議する。ただ、邱副院長は、「2000年に陳水扁政権が同基金から1,000億台湾元(約3,500億円)を拠出し株式を買い支えたが効果は得られなかった」として、慎重に対処していく意向を示した。
  

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株安企業に投資
 
 決定を受け、4大基金は資金3,000億元の資金を準備しており、今後市場への投入機会を探るとみられる。4大基金の管理委員会は29日、「台湾経済の基本面は悪くない。中長期的な見方に立ち、業績が優れ、かつ株価収益率(PER)が不当に低くなっている株式を引き受ける」という考えを示した。ターゲットは株価の低い電子および従来型産業の企業を主とする。

 また、資金源として指名した保険業界について、行政院金融監督管理委員会(金管会)の張秀蓮副主任委員は、「域内生保はもっと投資できる」と市場への積極的な資金投入を促した。台湾保険業界はリスク回避のため、株式市場での資金運用は運用資金全体の10%に抑えている。しかし、海外の業者は13~14%で、開きがあるという。

「投資上限は2.8兆元」

 これに対し保険業界は、「確かに業界には約8兆元の運用資金があるが、『保険法』の規定によると株式投資に運用できるのはそのうちの35%、すなわち2兆8,000万元しかない」と指摘している。また、「株価は現在底値」という見方をしつつ、資金投入は一気に行うことはなく、段階的に実施する方針だ。

 行政院は29日、証券交易所および証券櫃タイ(タイは木へんに䑓)買売中心に、緊急に上場・公開企業の財務状況調査を指示した。その上で、株価収益率が低くなっている台湾積体電路製造(TSMC)、中国人造繊維(中繊)など19企業に対し、金庫株実施を奨励する方針を示した。

中銀総裁は批判的
 
 行政院の株価対策に彭淮南中央銀行総裁は、「株安の原因は国際的な環境、外資の資金引き揚げ、輸入インフレによるものだが、台湾株への影響は比較的小さい。外資やホットマネーにばかり頼っていては、台湾株にとってプラスにならない」と、過剰反応ではないかと疑問を投げ掛けた。

 また、工商時報も「最も避けなければならないのは、株価の下落を恐れるあまり、正常な市場の運営を損なうことで、『8大対策』で効果がなかった場合はどのような手段に出るのか見守る必要がある」としている。

 なお、30日の株式市場は、寄り付きは56ポイント高で始まったものの売り圧力に押され、結局終値は、前営業日比25.22ポイント(0.33%)安の7,523.54ポイントで引けた。取引時間終了直前に大量の買いが入ったため、かろうじて7,500ポイント台を維持した。
 

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