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モーラコット台風から10年、今も残る爪痕


ニュース 社会 作成日:2019年8月7日_記事番号:T00085058

モーラコット台風から10年、今も残る爪痕

 2009年8月6日から10日にかけて台湾中南部に甚大な水害をもたらした台風8号(アジア名・モーラコット)襲来から丸10年が経過した。当時、大きな被害を受けた阿里山森林鉄路や道路網は、今も復旧していない場所が残っており、爪痕の深さを示している。

/date/2019/08/07/19kakomi_2.jpgモーラコット台風では、当時の馬英九政権の対応に厳しい批判の目が向けられた。馬氏(中)は先週、嘉義県の被災地を訪れて復興の模様を確認した(中央社)

 阿里山森林鉄路は日本統治時代の1912年に木材を運ぶ林業鉄道として開通し、戦後は台湾鉄路(台鉄)嘉義駅から阿里山の森林の中を進む観光鉄道として人気を博していた。09年のモーラコット台風襲来を受け、全長71.4キロメートルの線路のうち421カ所で土砂崩れなどの被害が発生。運行を全面停止した。

 その後、地道に復旧作業が進められ、10年に山頂部の神木~祝山駅間、および平地部の嘉義~竹崎駅間が、14年に山間部の竹崎~奮起湖駅間が復旧し、15年9月15日には同年末の全線復旧に向け、ついに全線のテスト運行が再開された。

 ところがその月末に台風21号(アジア名・ドゥージェン)が襲来。阿里山森林鉄路の58キロ地点で大規模な土砂崩れが発生した他、42号トンネルも崩落した。特にトンネルの被害は深刻で修復が不可能だったため、新たなトンネルを掘削する必要に迫られ、全線復旧は大きく先延ばしされる事態となった。

 ただ、速やかな復旧を願う地元の協力もあって、現在、運行停止区間は残すところ十字路駅~第一分道駅の7.4キロのみとなっており、22年末には全線復旧が見込まれている。

 一方、モーラコット台風は、橋137基の損壊を含め、省道や高速道路17本に被害をもたらし、当時、通行止めとなった区間は653キロにも及んだ。特に土石流により474人が生き埋めとなるなど壊滅的な被害を受けた高雄市甲仙区の小林村では、地域内を通る道路が12キロにわたり土砂に埋もれた。

 復旧に駆け付けた作業員は、土砂の下に埋まっている住民の遺体を傷つける恐れがあるため、通路を作ろうにもどこから手を付ければよいか分からなかったそうだ。

 それでも作業員が危険を冒して復旧作業を続けた結果、現在、モーラコット台風によって被害を受けた道路の大部分で通行が再開され、残る未通区間は21年末の復旧が見込まれる省道・台20線の梅山口~向陽路間のみとなっている。

 甚大な災害からの復興は、希望を捨てず根気よく地道に努力を続ける他ない。