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さよなら青春の思い出、士林の老舗映画館が再開発


ニュース 社会 作成日:2019年8月8日_記事番号:T00085084

さよなら青春の思い出、士林の老舗映画館が再開発

 台北市の士林夜市(士林区)で70年の歴史を持つ老舗映画館「陽明戯院」が9月15日に現在の建物での営業を終了する。再開発に伴い、新たに建設されるショッピングセンター(SC)に入居し、3年後にもリニューアルオープンする予定だ。

/date/2019/08/08/19kakomi_2.jpg日中の陽明戯院。夜市がにぎわう夜になると、観光客が列をなす屋台の陰で、目立たなくなってしまう(陽明戯院フェイスブックより)

 1949年にオープンした陽明戯院は、人通りが見込めることから周辺に行商人が集まり、屋台を中心とした士林商圏の発展の一端を担った。今や台北市で最も古い歴史を持つ映画館で、入り口前には毎夜、フライドチキン、ソーセージ、ポテトなどを売る著名屋台が軒を連ねる。

 付近に35年間住むインターネットユーザーは「フライドチキンや魯肉飯(豚肉そぼろかけご飯)を持ち込める唯一の映画館だった。さよなら青春」と、古き良き時代を懐かしんだ。高校時代に友人と通ったという別のユーザーからは「営業終了前にもう一度見に行かなくちゃ」との声が上がった。

 ただ、陽明戯院の設備は老朽化しており、続々と開業する最新のシネマコンプレックス(シネコン)で見る臨場感のある映画には遠く及ばない。周辺のある住民は、スクリーンが暗いのであまり行くこともなかったと再開発を歓迎している。一方、屋台業者からは、再開発工事が客足に影響するため、屋台の場所を移動しなければならないとの不満の声が出た。

 陽明戯院の運営業者は、「営業終了ではなく、新たな始まりだ」と強調した。リニューアル後も引き続き「陽明戯院」の館名を使用し、最新設備を導入した10スクリーンを設ける計画だ。台北市政府に提出された建築許可申請書類などによると、新たな建物は地上8階、地下2階建てで、4~8階に映画館が入居する。1~2階は小売店、3階は飲食店が入居する予定だ。

 住商不動産企研室の徐佳馨経理は、映画館とSC売り場は相互補完関係が期待できる他、士林商圏のイメージ一新に貢献すると期待感を示した。

 ただ、シネコンが乱立する中、新たな映画館が差別化を図り、客を呼び込むのは容易ではない。ネットユーザーからは、現代的な建物に建て替えて、士林を象徴するランドマークを失ってしまうより、このまま博物館に転換した方が良いとの意見も上がっている。