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1756人のデーター分析による「日系企業給与リサーチ」(第2回)《Y’s News 1周年記念特別連載》


ニュース その他分野 作成日:2008年7月2日_記事番号:T00008528

1756人のデーター分析による「日系企業給与リサーチ」(第2回)《Y’s News 1周年記念特別連載》

 
●時間外勤務手当

 皆さまご存じの通り、台湾では時間外勤務手当(以下:残業手当)の支払い率が日本より高く設定されています。(下図参照)
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 そこで経営的な立場で考えた場合、コストが大幅増となる残業手当はあまり払いたくないのが心情です。他の日系企業はどれぐらいの割合で残業手当を支払っているのかが気になります。(図1参照)
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 図1の分析から、以下のことが分かります。

1.5%の企業(7社)が全員に残業手当を支給している。
2.15%の企業(11社)が全員に残業手当を支給していない。
3.66%の企業(48社)が一部職位へ残業手当を支給していない。
4.全員に残業手当を支給していない企業は「貿易卸売り業」に多い(21社)

 さて、日本よりコスト高となる残業手当ですが、いったいどう扱えばいいのでしょう?法律通りに解釈しますと、台湾では原則として全員に残業手当を支給する義務があります。

 日系企業では「経理以上、課長以上は管理職だから残業手当を支給しない」としている企業が多いのですが、これも労働基準法違反となります。

●残業手当を支払わなくてもよい社員

 台湾の労働基準法第84条の1では「労働時間に関する例外事項」として、

1.管理、監督、または専任制の専業者
2.監視または間歇性の高い仕事に従事する者
3.その他特殊性のある仕事に従事する者

 以上の3点の業務に該当する者は、例外として残業手当を支払わなくてもよいと規定されています。しかし、労工局への認可申請が必要な上、実際にはほとんど認可されません。(労働基準法施行細則第50条の2)

 労工委員会の公告として「労働基準法84条の1適用職業一覧」というものが出ていますが、原則として、ここに掲載されている職業以外では認可されないと思っていただいてかまいません。

 ですから台湾では、「残業手当をどうやって少なく抑えるか?」よりも「どうやって業務効率を高め残業をさせないか?」を考えた方が賢明と言えます。

●役職手当

 図2は役職手当の支給状況をまとめたものです。前述の残業手当と絡め「わが社は役職手当で残業見合い分を支給している」と主張される企業もございますが、この考えも法に抵触します。

 「明らかに残業手当を上回る役職手当」でなければ、この主張は通りません。ですから「主任手当:1,000元」「課長手当:5,000元」程度では、労働争議や裁判になった場合には、ほぼ認められないと考えておくべきです。

●その他手当

 前述の2種類の手当以外で、台湾で支給される一般的な手当をご紹介いたします。

1.食事手当

 台湾では食事手当は月1,800元までは所得税がかかりません。そこで、食事手当という意味合いは無くとも、従業員の所得税を節税する為に食事手当を支給するのが一般的です。

 ただし、今回の調査でも数件見かけましたが、「食事+○○手当」と、他の手当を含めてしまうと、1,800元を超える部分には所得税がかかりますので、ご注意下さい。

2.皆勤手当

 遅刻・早退や欠勤をシステム的に抑制する方法として台湾では「皆勤手当(全勤獎金)」を支給するのが一般的です。例えば1,000元/月を皆勤手当として、遅刻・早退や欠勤があった場合はもらえないという制度です。ただし、この方法では1度してしまえば全額貰えなくなってしまうので、1回当り250元などと設定した方が効果があります。

3.資格手当

 業務に必要な資格を所有する従業員には資格手当を支給している企業もあります。資格手当の金額は「重要度」、「取得難易度」、「業務量」などを考慮し、各社で決定しています。

4.通勤手当、住宅手当

 日系企業では日本本社のやり方を模して、「通勤手当」や「住宅手当」を支給している会社は多くあります。しかし一般的に台湾ではこれらの手当はありません。

5.退職手当

 日本では会社を辞職すると「退職手当」が支給されますが、台湾ではこのような制度はありません。


ワイズコンサルティング 吉本康志
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