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フード配達に労基法適用、死亡事故頻発で


ニュース 商業・サービス 作成日:2019年10月15日_記事番号:T00086311

フード配達に労基法適用、死亡事故頻発で

 foodpanda(フードパンダ)やUber Eats(ウーバーイーツ)など飲食店の宅配代行サービス(フードデリバリーサービス)の配達員の交通死亡事故が相次ぐ中、労働部は14日、配達員との間には実質的に雇用関係があるとの判断を示した。配達員に対する労働基準法(労基法)適用を意味し、これまで事故による損害の補償を受けられなかった配達員にとって待遇改善につながるが、人件費が上昇して、消費者の利用料金が引き上げられる可能性がある。15日付工商時報などが報じた。

/date/2019/10/15/00food_2.jpg台湾のフードデリバリー業者は7社、配達員は8万人、市場規模は300億元以上に成長した(14日=中央社)

3人死亡・2人けが

 双十節(10月10日)の4連休、配達員2人が交通事故で死亡した。14日にも新北市、雲林県、嘉義県での交通事故で、配達員3人がけがを負った。ただ、各社は配達員とは業務委託関係にあるとして、労工保険をかけておらず、労災給付が受けられないことが問題視されていた。

 労働部職業安全衛生署(職安署)は14日、台北市労働検査処と桃園市労働検査処とともにフードデリバリーサービスの労働検査(立ち入り検査)を実施し、配達員に労働時間の指定、制服の着用、ロゴ入り保温ボックスの使用などの規定があることを確認し、一定の指揮監督下にあり、使用従属性があると判断した。

 労基法第59条に基づくと、労働者が就業中に死亡した場合、雇用主は平均給与5カ月分の葬儀費用、40カ月分の死亡補償を給付しなければならない。

 この他両社は、労働者の名簿、賃金台帳、出勤簿などの不備で、最高175万台湾元(約620万円)の罰金が科される可能性がある。

 労働部は今後2週間以内に、残りのフードデリバリーサービスに対しても労働検査を行う予定だ。

/date/2019/10/15/00labor_2.jpg職安署の鄒子廉署長は、死亡した配達員2人にかけるべき労工保険をかけていなかったとして、労工保険条例により業者を処罰すると表明した(14日=中央社)

コスト増でサービス低下か

 労働部の判断に対して両社は、配達員とはあくまで業務委託関係との主張を堅持した。両社の配達員はそれぞれ1万人余り。雇用関係となれば、人件費の上昇は避けられない。

 フードパンダは、配達員には死亡、後遺障害、第三者賠償責任などを対象とする保険をかけており、今後は交通安全講習を強化すると表明した。ウーバーイーツは、強制保険(自賠責保険)や第三者賠償責任保険に加入していると説明した。

 両社は、規定を確認中で、コスト上昇額は試算しておらず、対策も検討中と表明した。今後、提携飲食店の手数料を引き上げたり、配達員の数を減らしたり、配達の無料サービスや優遇サービスを減らす対応策が予想される。

保険加入で自衛

 ある高雄市の配達員は、1日8時間で週6日働いている。台湾の最低時給は150元だが、フードデリバリーで1日12時間働くと月に8万~9万元稼ぐこともできると魅力を語った。

 ある新竹市の配達員(36)は、1日11~12時間、月22日働き、月収は5万元余り。時間の融通が利くので、生まれたばかりの子供や妻に会いに病院に行けるのが良いが、事故で働けなくなった場合を想定して、自分で保険に加入していると語った。