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警告無視の登山で遭難、「国家賠償」の適用外へ


ニュース 社会 作成日:2019年10月25日_記事番号:T00086541

警告無視の登山で遭難、「国家賠償」の適用外へ

 蘇貞昌行政院長は先ごろ、登山活動を奨励するため、これまで厳しい規制を設けていた山間地域への一般人の立ち入りを開放する政策を進めると表明した。一方で24日、監督機関の警告を無視して登山を強行した場合、「国家賠償」の対象から除外または賠償責任を制限する内容の「国家賠償法」改正案が閣議決定され、賛否の議論を呼んでいる。

/date/2019/10/25/19mountain_2.jpg登山家待望の立ち入り開放政策を発表する蘇行政院長。保険会社は、登山保険をかけること、計画を逐次変更しないこと、通信機器を携帯することなどを呼び掛けている(21日=中央社)

 蘇行政院長は21日に記者会見を開き、台湾の10倍の面積を持つ日本に標高3,000メートル級の山は20座ほどしかないが、台湾には268座も存在し、登山愛好家の数も多いと指摘。しかし、これまで政府は管理者、規制者としての役割に重きを置き、市民から山に親しむことを奨励していないとの印象を持たれていたとの認識を示し、今後は国防および安全上の問題があるエリア、原住民の聖地、環境・生態上の保護対象エリアを除く山間部を全面的に開放すると表明した。

 政府は既に、市民がより快適に登山を楽しめるよう、山小屋や登山道の整備に4年で7億台湾元(約25億円)の予算を計上するとともに、通信環境の充実に向けた設備の整備も進めている。

 一方で蘇行政院長は、「政府は市民が山に親しむことを奨励するが、無制限に責任を負うことはできない」と強調。登山者自身も自ら危機管理を行い、責任を引き受ける精神を培うよう要請した。

 現行の「国家賠償法」では、立ち入りが開放された山や海、川などで市民が負傷、死亡した場合、政府に賠償責任が生じる。しかし、今回閣議決定された改正案では、登山口などに当局が警告を掲示しているにも関わらず、市民がこれを無視して登山を強行した場合、遭難しても「国家賠償」の責任が制限される。

 これに対し、遭難発生時に救助活動に携わる消防隊関係者からは、「力を尽くして救助しても、後で賠償の訴えを起こされることも多い。法改正で隊員たちのプレッシャーも軽減される」、「登山客が事前にリスクを認識し、遭難の責任を救助隊に押し付けなくなることを期待する」などと歓迎の声が上がっている。

 一方で2011年に遭難し亡くなった大学生、張博崴さんの両親は改正案について、重要なのは、遭難事故発生時に消火を専門とする消防隊員に頼らないで済むよう、救助の専門家を育成することではないかと批判的な見方を示している。