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部下侮辱は管理に問題、兆豊銀に賠償判決


ニュース その他分野 作成日:2008年7月8日_記事番号:T00008685

部下侮辱は管理に問題、兆豊銀に賠償判決

 
 兆豊商業銀行の元行員の男性(59)が、在職当時の2006年2月、上司から注意を受けた際に「怠け者、恥知らず」と怒鳴られたことが名誉棄損に当たるとして損害賠償を求めた裁判で、士林地方法院(台北市)は7日、男性の訴えを認め、「上司の言動は管理行為に当たり銀行側にも連帯責任がある」として、被告の上司と兆豊銀に30万台湾元(約105万円)の連帯賠償を命じる判決を下した。上司の行き過ぎた指導に企業の賠償責任を認める初の判断だが、産業界からは「企業経営をより困難にする判決」と疑問視する声も上がっている。8日付蘋果日報が報じた。

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兆豊金融控股本社。上司と部下の衝突は個人的な不仲が要因の場合もあり、業務上の行為か判断が難しいことも多いとみられる(8日=YSN)
 
 事件は同行天母支店で、被告の廖瑞令経理(当時、現在は同行国外部副理、52)が原告の李栄元襄理(当時)に「どうして休暇届を受理してくれないのか?」と問われた際、「なぜそんなに怠け者なのか?月給9万元で何も仕事をしないなんて恥知らずだ」と怒鳴ったもの。李原告は廖被告の言動は名誉棄損に当たるとして200万元の損害賠償を支払うよう廖被告と銀行側に求めていた。

「管理責任、果たされず」

 兆豊銀は、「廖被告の言動は李原告の粗悪な態度が原因で、侮辱の意図はなかった。また業務とは関係のない個人的行為だ」と主張したが、士林地方法院は、「廖経理の行為は管理業務におけるもので、銀行側は廖経理の不当な言動に対し注意・管理を行ってきたという証拠はない」として、銀行側が管理責任を十分果たしていなかったという判断を下した。

 この判決に対し産業界からは、「従業員が思わず口にしたひと言が企業責任とされ、高額の賠償を求められることは企業・従業員双方にとって良くない。台湾経済の発展にも影響する」といった否定的な反応が目立つ。一方、「従業員が上司の侮辱行為に泣き寝入りせずに済む道ができた」と評価する反応も出ている。

労働争議件数、日本の20倍

 行政院労工委員会の統計によると、台湾の企業数は約60万6,000社(06年)で、日本(約600万社)の10分の1以下だが、年間の労働争議の件数は14万2,625件(同)と日本(6,625件)の21倍以上に上る。

 ワイズコンサルティングの手塚理奈子コンサルタントは、台湾で労働争議が多い一因として、「上司が上司としての教育を受けておらず、その役割を理解していないことが多い」ことを指摘する。また、「個人主義的な傾向が強く、面子(メンツ)を重視する民族性のため、ちょっとしたひと言が大きな問題を招くことがある」としており、まさに兆豊銀の裁判のケースに当てはまりそうだ。

積極的にコミュニケーションを

 手塚コンサルタントはまた、「台湾人従業員は不満を感じても直ちに法的手段に訴えることは少なく、まず家族や友人に相談するのが一般的だ。この段階で話に耳を傾けて問題解決に当たれば、大きなトラブルは防げる」とアドバイスする。

 なお、トラブルが起こった場合の罰則を、あらかじめ就業規則で決めておくことも有効だという。明確な基準がない場合、問題が起きた時に対応が難しい。罰則規定の制定は従業員全員の同意が必要で、この条件が満たされていないと労工局からの認可が下りない。