馬英九総統は10日、米半導体製造装置メーカー、アプライド・マテリアルズ(AMAT)社のマイケル・スプリンター社長兼CEO(最高経営責任者)との会談で、半導体12インチウエハー工場の中国投資開放を示唆した。半導体業界からはこの発言に歓迎が示されたが、「中国の産業集積状況は台湾より悪い」、「生産コストは大差ない」など12インチ工場への投資開放の実質的なメリットには疑問の声も上がっている。11日付工商時報などが報じた。
スプリンター社長との会談で馬総統は、インテルが昨年、大連での12インチ工場建設を宣言し、来年から量産に入ることを挙げ、「現在8インチまでと規制している台湾は出遅れている」と語った。馬総統はその上で、「ワッセナー協定以上の制限を加える必要はない。台湾が規制緩和を進めることは合理的で必要な政策だ」と明言した。
馬総統の発言は、「12インチ工場と90ナノメートル製造プロセスの開放を示唆した」と業界で受け止められており、既に中国に8インチ工場を設置している台湾積体電路製造(TSMC)や茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)は共に歓迎の意を表明した。なお観測によると、経済部は9月に0.13マイクロメートルプロセスの開放発表を計画しており、続いて12インチ工場および90ナノの開放について検討するとみられている。
「核心技術の残留が最重要」
一方、馬総統の発言を受けて尹啓銘経済部長は、「米国政府がインテルに中国での12インチ工場設置を認めたのは、使用される製造プロセスが本国よりも2世代遅れた技術のためだ」と語り、「最も重要なことは核心技術を台湾にとどめることだ」と強調した。その上で、「たとえ12インチ工場を開放しても、中国の産業環境は台湾より遅れており、業者も先進的な技術をそれほど中国に投資することはない」という考えを示した。
TSMCも同日、「積極的に(12インチ工場設置の)申請を行うことはない」と語り、茂徳の主管も「DRAMメーカーにとって必要なのは先端プロセスの開放だが、政府が70ナノあるいは60ナノを開放する可能性はなく、中国での12インチ工場設置は自らの足を縛るようなもの」と、積極的な投資を否定している。
生産コストに大差なし
外資系証券会社は、12インチ工場の中国投資開放は、域内半導体業界にとって確かにプラス面もあるが、中国の人件費上昇などにより現在中台間で生産コストに差はなくなってきており、実質的な効果は薄いとの見方を示している。アナリストによると、現在台湾での90ナノによる生産コストは、中国での0.13マイクロでの生産に比べ30%安く「比べものにならない」状態だという。
また、ある業者も、域内DRAMメーカーの製造プロセスは既に70ナノまで微細化されており、中国に12インチ工場を設置することに大きな意義はないとしている。ファウンドリーについても、90ナノが同時に開放されれば中芯国際集成電路製造(SMIC)などのライバルに対抗できるとしており、先端プロセスの開放が伴って初めて競争力向上に有益との見方を示した。
工場建設は重要ではない
工商時報では、20年をかけて築き上げた半導体設計および製造プラットフォームを、中国の巨大市場といかに結びつけるかが域内半導体産業の戦略にとって重要であり、工場を建てるかどうかはさほど重要ではないと指摘している。