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国民党が大規模集会、愛国心で訴求図る


ニュース 政治 作成日:2020年1月10日_記事番号:T00087821

国民党が大規模集会、愛国心で訴求図る

 総統・立法委員選挙の投票日を2日後に控えた9日、最大野党・国民党が台北市中心部で大規模集会を開き、会場の凱達格蘭(ケタガラン)大道は立すいの余地もないほどの大勢の支持者で埋まった。しかし、最終盤で繰り出したのは中華民国への愛国心に訴える昔ながらの手法で、支持者の連帯感を高める程度の効果しか生まなかったとみられる。

/date/2020/01/10/00top1_2.jpg支持者の歓声に応える韓候補(右)と張善政・副総統候補(左)。「総統府へ前進する」と気勢を上げた(9日=中央社)

 凱達格蘭大道に向かう中山南路では、支持者の1人が「韓国瑜」と叫ぶと、周りの人々が「当選」と呼応する光景が繰り返された。ある支持者が同党予備選で敗れて親民党の応援に回った郭台銘(テリー・ゴウ)鴻海精密工業前董事長を「悪徳商人」と批判すると、周囲は「その通りだ」と応じた。

 国民党の選挙集会は以前、参加手当を配って大型バスで動員するのが通例だったが、今回は動員をかけなかった。それでも驚くべき数の支持者が集まったのは、集会の数を絞って直前に一気に盛り上がりを生むことを狙った、同党の戦略の効果が出たものといえる。同地で行われた過去の大規模集会の例からみて、少なくとも5万人以上の人出があったとみられる。

 国民党の集会は与党・民進党に危機感を抱かせたもようで、蔡英文候補は同日宜蘭市で開いた集会で「ライバルを軽視してはならない。楽観的になり過ぎてはならない」と陣営の引き締めを図るとともに、投票所に足を運ぶのかに不安感がある若者層に必ず投票に行くよう強く呼び掛けた。

民進党批判に終始

 韓候補は蔡候補を「中華民国万歳と言ったことがない」と批判。応援演説に立った各県市の首長も次々に中華民国への愛国心を表明し、大勢の支持者が青天白日満地紅旗を振って応えた。

 韓候補の演説は民進党批判に終始した。蔡政権を「腐敗」と決め付け、再選となった場合は中華民国、自由民主、若者、台湾のいずれも後がなくなると危機感をあおり、「民進党を引きずり降ろそう」と呼び掛けた。そして、20~30年前の栄光と自尊心を取り戻すべく、台湾の人々のために牛馬となって働くと述べて支持を訴えた。

 集会ではこの他、ラジオ局、中国広播(中広、BCC)董事長で、政治討論番組キャスターの趙少康氏が、宋楚瑜候補(親民党)は総統選に出馬しているものの当選する可能性はなく、宋候補への投票は蔡候補への投票と同じだとして、親民党および郭氏の支持者に韓候補への投票集中を呼び掛けた。

効果は限定的か

 大規模集会は参加者を感動させ、票集めに駆り立てる効果が期待されている。ただ、この日の韓候補の演説は政策に一切触れず、中華民国への愛国心と民進党批判で一貫した、国民党の政治家であれば誰でも話せる内容だった。このため核心的支持層の連帯感を満足させたのみで、同層以外への波及効果は限定的とみられる。

/date/2020/01/10/00top2_2.jpg青天白日満地紅旗の小旗を集めて作った大旗。支持者らは創意をこらした応援グッズを持ち込んで集会を盛り上げた(9日=YSN)