一国二制度を拒否、国際社会に明確に表明


ニュース 政治 作成日:2020年1月12日

一国二制度を拒否、国際社会に明確に表明

記事番号:T00087826

 民進党・蔡英文氏による見事なV字回復の勝利だった。民進党は中間選挙に当たる2018年の統一地方選で惨敗。当時は再び国民党に政権が交代するとの予想が大勢を占めていたが、民進党は短い期間で党勢を回復させて圧勝した。過去最高の817万票での勝利によって、台湾は中国による「一国二制度」を拒否し、自由民主主義を堅持する明確なメッセージを国際社会に届けた。

/date/2020/01/12/17commentary_2.jpg蔡氏は投票日前日の大規模集会でも、台湾を「第2の香港」にしない決意を強く訴えた(YSN)

 蔡氏の勝利は、中国の統一攻勢強化と昨年の香港の反中デモが直接的な要因になった。中国は習近平政権の登場とともに覇権主義的な姿勢を強め、周辺諸国・地域に、より強圧的な姿勢で臨むようになった。習国家主席は昨年1月、台湾に一国二制度の受け入れを迫る談話を発表。蔡氏は直ちに拒否を示し、統一地方選で下落した声望を回復させた。6月に大規模化した香港の逃亡犯条例改正反対デモと、それに対する警察の激しい弾圧は台湾の有権者に一国二制度の現実を見せつけ、「きょうの香港は明日の台湾」との危機感が拡大。台湾の民主主義を守る姿勢を明確にした蔡氏に急速に支持が戻った。

 一方、米国はトランプ大統領の登場とともに、対中関係の基調を従来の「戦略的パートナーシップ」から「戦略的競争関係」に変更。貿易戦争によって中国経済の弱体化を狙う一方、台湾との関係強化を図り、中国と距離を置く蔡氏を事実上支援した。

 蔡氏の得票数は前回16年から128万票もの上積みとなったが、これは「中国に対抗する」との訴えが共感を呼び、特に若者層が「韓国瑜氏が当選したら中国化への第一歩」との認識を抱いたことが大きな要因となった。若者層は蔡氏の呼び掛けに応じて投票所に足を運び、中国に「ノー」を突き付けたのだった。

北京・香港・陣営分裂で敗北

 一方、国民党は中国の強硬姿勢と香港のデモが逆風となった。同党は1992年の共通認識(92共識)について「一中各表(一つの中国、それぞれの解釈)」、すなわち「台湾は中華民国」の立場で両岸交流を推進してきたが、中国は近年「92共識は一つの中国の原則」として「一中各表」を否定。これにより両岸関係の安定を訴える同党の主張は説得力が減退した。

 統一地方選のヒーロー、韓氏の人気で総統選の突破を図ろうとした戦略にも問題があった。高雄市長に当選したばかりの韓氏を担ぎ出したこと、韓氏個人の能力が疑問視されたことが陣営の分裂を生み、郭台銘(テリー・ゴウ)鴻海精密工業前董事長の離反や王金平前立法院長の離脱、宋楚瑜親民党主席の立候補につながって結集力を発揮できなかった。

 さらに、親中国共産党的と目された候補者が上位に組み込まれた比例名簿を作成したことで有権者の大きな反発を浴びた。国民党の惨敗はこの時点で決定したといえる。

吉川直矢

吉川直矢

ワイズメディア

東京外国語大学中国語学科卒。大手放送局記者、海外経済情報メディアでの編集長職を経て、07年Y'sニュース創刊に参加、以来編集長を務める。専門分野は台湾政治。