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惨敗の国民党、多難な党勢回復


ニュース 政治 作成日:2020年1月12日_記事番号:T00087830

惨敗の国民党、多難な党勢回復

 惨敗を喫した国民党の行く末は厳しい。今回の選挙結果を受け、呉敦義主席と党指導部は11日夜、早々と引責辞任を表明した。後任の党主席には朱立倫元主席(前新北市長)らの名前が挙がるが、今回の総統選で敗れた韓国瑜高雄市長の罷免回避など前途は多難で、党勢回復の道筋は見えない。

/date/2020/01/12/17kmt_2.jpg国民党の惨敗は、人気の高かった韓氏を擁立するため、総統候補の選出方式を変更して党分裂を招いた呉主席(右前2)の責任との声が出ている(11日=中央社)

 党主席ポストは曽永権第1副主席が当面代行を務めた後、3~5月にも中央常務委員会の改選に合わせて選出される見通しだ。順当ならば、朱氏の主席復帰が有力視されるが、周錫瑋元台北県長、連勝文中央委員らの名前も取り沙汰されている。

 当面の課題は韓高雄市長の罷免回避だ。罷免に向けては高雄市民3万人分の提議書が昨年末、中央選挙委員会(中選会)に提出されており、今後有権者の10%に当たる約23万人の署名が集まれば、リコール(解職請求)の賛否を問う住民投票が実施されることになる。

92共識の前提崩壊

 中台関係を巡っては、いわゆる「1992年の共通認識(92共識)」に有権者から明確な「ノー」が示されたことを厳粛に受け止める必要がある。最近の香港での大規模デモも相まって、有権者の間で中国共産党に対するアレルギー、拒否感がますます強まっている。92共識はそもそも「一中各表(一つの中国、それぞれの解釈)」を前提としてきたものの、中国の習近平政権は最近、「92共識とは一つの中国の原則であり、統一だ」と主張し、中華民国の存在空間を完全に消し去った。その結果、92共識はもはや台湾の有権者の理解を得られなくなった。両岸(中台)関係の新たなテーゼ構築を求める声は少なくない。

 その上、民進党政権が政権交代を繰り返す中で一貫して取り組んでいた「本土意識」教育の強化により、若者の間では中華民国をよりどころとする「大中華意識」は薄れ、国民党離れには歯止めがかからなくなっている。

 党運営も火の車だ。民進党政権下で不当党産処理委員会(党産会)が国民党の資産に次々とメスを入れ、多額の資産が凍結された結果、国民党に従来のような「世界一の金持ち政党」の面影はもはやない。立法院での主導権奪還に失敗した結果、「不当党資産処理条例」の廃止も不可能となり、得票数に基づく政党補助金だけでは運営経費は賄えなくなっている。

 2022年の統一地方選、24年の次期総統選挙を視野に、国民党は党勢の立て直しを求めていばらの道を歩むことになりそうだ。

本紙特約記者・宮城英二