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蔡英文総統2期目就任、中国に対話呼び掛け(トップニュース)


ニュース 政治 作成日:2020年5月20日_記事番号:T00090050

蔡英文総統2期目就任、中国に対話呼び掛け(トップニュース)

 蔡英文総統(民進党)が20日、2期目に就任した。両岸(中台)関係では、一国二制度を拒絶し、「両岸関係は歴史の転換点にあり、双方に責任がある」として、中国に対話を重ねて呼び掛けた一方で、憲政体制改革のため立法院に「修憲委員会(改憲委員会)」を設置し、憲法改正議論を進める考えを示した。ただ、憲法の「統一」を前提とする語句の修正に議論が及べば、台湾独立の動きとして中国側の強い反発も予想される。米中貿易戦争や新型コロナウイルスといった環境激変の中で、バランスある難しいかじ取りが続く。中央社電などが伝えた。

/date/2020/05/20/00top_2.jpg蔡総統。新型コロナウイルスを受け就任式が200人規模に縮小された中、市民の協力が感染対策を成功に導いたと感謝を示した(20日=中央社)​

 1月の総統選挙で史上最高となる817万票の得票数を得て再選を果たした蔡総統は20日の就任演説で、当選後の談話で述べた「和平、対等、民主、対話」の8文字を再提起し、北京当局(中国)の一国二制度による台湾の矮小(わいしょう)化、台湾海峡の現状破壊を、決して受け入れないのは揺るがないと強調した。また、両岸事務は、憲法と「台湾地区与大陸地区人民関係条例」(両岸人民関係条例)にのっとって処理し、台湾海峡の平和と安定、現状を守るのがわれわれの一貫した立場とした上で、「両岸関係は歴史の転換点にあり、双方に責任がある」として、中国側に対話に応じるよう呼び掛けた。

 一方で、立法院に修憲委員会を設置し、政府の制度、市民の権利など憲政体制の改革を議論すると表明した。民主主義の深化のため、憲政体制を時代と台湾社会の価値に適合させる方針だ。8月には、監察機関の監察院に「国家人権委員会」を設置し、監察院改革の起点とするほか、公務員人事を担当する考試院の改革にも着手する。監察院と考試院は、▽行政院▽立法院▽司法院──とともに五権分立を構成しており、こうした憲法上の体制の変更を意図しているとの見方も出ている。

 憲法には「国家統一前」や「固有の領域」といった、統一を前提とした語句が含まれており、修憲委員会が設置されれば議論が及ぶことが必至だ。民進党の一部議員が先ごろ「国家統一前」の語句を削除する改正案を提出し撤回する動きに出て物議を醸したばかりで、蔡総統が中台関係で対話を掲げる上での障害となる可能性もある。任期中の改正を目指すにしても、憲法改正には住民投票で選挙人の過半数の約966万人の同意票が必要となるなど、ハードルは高い。

 2016年5月に1期目に就任した蔡総統は、「一つの中国」に関して中国との対話の基礎とされてきた「1992年の共通認識(92共識)」を認めず、19年1月の習近平国家主席の「一国二制度」を迫る発言を明確に拒否。19年6月からの香港での大規模な反中デモには積極的に支持を表明した。中国側が対抗措置として、個人旅行客や団体旅行客の送り出しを制限したため、台湾の観光産業が大きく落ち込むなどの影響が出た。新型コロナウイルス対策で世界的な評価を受けたにもかかわらず、世界保健機関(WHO)の年次総会、世界保健総会(WHA)へのオブザーバー参加は17年から4年連続でかなわなかった。

 一方、台湾制憲基金会が18日発表した世論調査では、蔡総統の支持率は72.6%と前年比17.6ポイント上昇し、過去最高だった。2期目を迎えた蔡総統には、新型コロナウイルス感染症収束後の中台の市民交流や政府関係者往来の再活性化、海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)の継続問題なども課題となる。

 副総統には頼清徳氏が就任する。閣僚人事では、新型コロナウイルス感染症対策の継続性も考慮し、蘇貞昌行政院長、陳其邁行政院副院長、陳時中衛生福利部(衛福部)長をはじめ、主要閣僚の多くが再任された。

戦略物資、一定量を台湾で生産

 蔡総統は、経済政策については「5プラス2産業創新政策」の路線を発展させ、▽情報・デジタル産業の発展により半導体・情報通信産業の重要生産地の地位確保▽第5世代移動通信(5G)時代に合わせたデジタル転換、セキュリティー産業の発展▽新型コロナウイルス感染症流行の中での世界の医療・バイオテクノロジー産業との連帯▽航空宇宙産業など、官民連帯での防衛・戦略産業の発展▽グリーン再生エネルギーの発展と25年の再生エネルギー比率20%の達成▽マスクなどの医療物資、日用品、穀類、エネルギーなど重要物資の供給でサプライチェーンの台湾残留と一定程度の自給率確保──の六大核心戦略産業の推進を掲げた。サプライチェーンが世界各地に分散した中で、リスク管理として台湾での一定量の生産を確保し、製造業の振興を図る考えだ。