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TSMCの5ナノ強化版、来年Q1に延期か(トップニュース)


ニュース 電子 作成日:2020年6月1日_記事番号:T00090255

TSMCの5ナノ強化版、来年Q1に延期か(トップニュース)

 1日付経済日報によると、ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、5ナノメートル製造プロセス強化版(5ナノプラス)計画と3ナノ試験生産の設備搬入を、来年第1四半期へと2四半期延期するもようだ。米国が中国通信設備大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)に対する輸出規制を強化する中で状況を見極めるべく、先週、多数の設備サプライヤーに対し7月から年末までの設備の全数納入停止を急きょ通知したとされる。ただTSMCは1日、予定通り進行しており5ナノ延期はなく、3ナノは2021年試験生産、22年下半期に量産すると表明した。

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 米国の輸出規制強化が発表された5月15日から120日間は猶予期間となっている。ファーウェイ傘下の海思半導体(ハイシリコン)は発表当日に5ナノと12ナノで大規模な発注を行ったとされ、TSMCは猶予期間内に出荷すべく増産対応を取っているようだ。観測によると、ハイシリコン向けの5ナノ月産能力は2万枚余りだったが、5月には3万枚近くへと4割以上引き上げられ、アップル向けの2万7,000枚を上回ったとされる。

 一方で、TSMCは猶予期間後のハイシリコンからの注文は受けない構えで、これを受けて南部科学園区(南科)Fab18のP3工場での5ナノプラス約3万枚の生産計画は、来年第1四半期へと2四半期延期するようだ。TSMCは、個別顧客向けの生産能力割り当てについてはコメントしないとした。

 半導体製造設備メーカー、帆宣系統科技(マーケテック・インターナショナル、MIC)の高新明董事長兼執行長は、第2四半期を慎重視していると明らかにした。

設備投資額の下方修正も

 なお、TSMCは2週間の不服申立期間が鍵を握ると見ているとされる。4月中旬時点の今年通年の設備投資額見通しは150億~160億米ドル。不確定要素が排除されなければ、見直しを迫られる恐れがある。

 外資系証券会社は、設備投資額10億~15億米ドルの下方修正を見込む。一方サプライチェーン関係者は、来年へと先送りになる5ナノ生産拡大と3ナノ試験生産向け設備投資額は、従来見通しには含まれていなかったとみられ、今年7月の投資家向け説明会では150億米ドル下限の見通しを維持するとの見方を示した。

 一方、従来6月に予定していた3ナノの試験生産の設備設置も、同様に来年第1四半期へと延期になるようだ。TSMCは、3ナノの試験生産日程については投資家向け説明会で明らかにすると表明した。

 経済日報が同社関係者の話として伝えたところによると、2ナノの研究開発(R&D)は輸出規制強化の影響を受けておらず、開発を急いでいる。

ファーウェイ抜きでも「影響薄」

 設備業者は、TSMCの5ナノ生産能力の拡大は先送りになったとしても、ハイシリコン向けの5ナノ生産能力はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とアップルが分け合うことになり、12ナノや16ナノ生産能力も他の半導体メーカーによる奪い合いのため、影響は限定的と指摘した。

 また、中国が半導体設備の自主製造を強化していることに関して設備業者は、14ナノ以下の設備は米国の大手設備メーカーと技術格差があり、ハイシリコンが米国製設備に対する規制を回避するのは困難と指摘した。先進プロセスになるほど、米国製設備への依存度が高まる状況は変わらず、現段階で中国製設備に完全に切り替えることはできないようだ。

【表】