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誠品敦南店、31年の歴史に幕


ニュース 社会 作成日:2020年6月1日_記事番号:T00090273

誠品敦南店、31年の歴史に幕

 書店チェーン大手、誠品書店(エスライト・ブックストア)1号店で、24時間営業の台北の文化発信基地として多くの市民に親しまれてきた敦南店(台北市大安区)が31日に閉店し、31年の歴史に幕を閉じた。

/date/2020/06/01/19kakomi_2.jpg閉店まで残り数時間となった31日夜、敦南店入り口前の屋外広場では音楽ライブが行われ、多くの人が別れを惜しんだ(31日=中央社)

 誠品敦南店は1989年、仁愛円環(仁愛路と敦化南路のロータリー)に面した位置にオープン。94年、再開発に伴い入居ビルが取り壊されることとなり、同店からほど近い敦南金融ビルが移転先の候補に挙がった。このビルは百貨店への改装を計画していたが、当時の陳水扁台北市長が「当市に百貨店が1店増えなくてもよいが、誠品書店を失ってはならない」と後押し、95年に移転が実現した。

 それ以降、敦南店は▽野外音楽会▽各種講座▽地下階での演劇公演や展示会▽バザー──などそれまでになかった数々のイベントを実施し、文化発信の中心地となっていった。このため、この時期に成長期を過ごした市民は皆、敦南店に特別な思い入れがある。

 同店が99年に24時間営業を開始してからは学生など多くの「夜更かし族」に人気のたまり場となった。米CNNが「世界で最もクールな書店」の一つに挙げるなど海外メディアにも取り上げられたことで、外国人にとっても、夜市(ナイトマーケット)、ナイトクラブなどと並び、台北のナイトライフを楽しむ人気スポットとなった。

 敦南店の閉店が近づくにつれ、もう一度訪れておきたいと考える市民が多かったようで、この1週間は夜中でも入店に行列ができる盛況となった。30日には延べ3万5,000人、最終日の31日には5万人が訪れたようだ。「最後のお別れ」に訪れた客は、これまで自分が過ごした「定位置」に腰を下ろし、思い出に浸った。レジで精算する中高年の客が涙を浮かべ「こんないい店をなぜ閉めるの」と問いただし、応対する店員がもらい泣きする光景も見られた。

 誠品は29日、敦南店の閉店に伴い台北市信義区にある信義店で24時間営業をプレオープンした。同社の呉旻潔(マーシー・ウー)董事長は、信義店が多元的な世界を体現する24時間書店となると語っており、敦南店に代わる新たな文化発信地になると期待されている。