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村の高齢者を送迎して33年、ついに「後継者」現る


ニュース 社会 作成日:2020年6月22日_記事番号:T00090669

村の高齢者を送迎して33年、ついに「後継者」現る

 1日に3便しかバスがやって来ない辺ぴな村、屏東県牡丹郷旭海村に住む林春浦さん(83)は30年以上にわたり、村内の高齢者を乗せて病院や買い物の送り迎えをしてきた。ただ自身も高齢になり、これまでのような活動を続けていくことに不安を感じていたところ、交通部公路総局が2年をかけて需要調査を進めた上で、高齢者の自宅から目的地の入り口前まで運行する「幸福バス」を20日に開業させた。

/date/2020/06/22/19kakomi_2.jpg林さん(左)は公路総局から幸福バスを無料で利用できる「VIP」の称号を贈られた(20日=中央社)

 過疎が進む台湾のへき地では公共交通機関の経営が成り立たないことから、旭海村のように高齢者が高齢者を車に便乗させて移動するといった光景が当たり前になっているという。

 旭海村にも路線バスは走っているが、住民の家からバス停までは距離がある上、バスで病院に向かったとしても最寄りのバス停で降りてからさらに歩く必要があり、高齢者にとってはつらい道のりとなる。このバスは1日に3便しか運行されていないため、診察が早く終わっても長時間、次の便を待たなければならず、利用者は少ないそうだ。

 こうした窮状を見た林さんは過去33年間、朝早くに9人乗りの古いワゴンを運転して家々を回って高齢者を乗せ、病院や買い物へ送っていく毎日を過ごしてきた。また外出の送迎だけでなく高齢者に代わって買い物や公共料金の支払いを行ったり、多くの人の暗証番号を記憶し、農会(農協)で預金の引き出しまで手伝ったりしていたそうで、いかに信頼が厚かったかがうかがえる。

 そんな林さんも、まだまだ健康とはいえ80歳を過ぎて年々体力は落ち、運転や荷物を運ぶのも以前ほど思うようにいかなくなった。

 こうした現状を受けて公路総局は2年ほど前から幸福バスの開通に向け、車両の購入や運行ルートの設定などの作業を進め、このほど農会や商店、病院などを巡りつつ旭海村と車城郷および恒春鎮を結ぶ南北2個のルートが毎日運行されることとなった。

 20日に開かれた幸福バスの開通式典に出席した林さんだったが、式の最中にも、携帯電話には「迎えに来て」「代わりに買い物をしてきて」となじみ客からの電話が相次いだ。林さんは、笑いながら電話の相手に「後継者ができたんだよ」と返答した。