ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

キャッチャー、5G向け放熱筐体で商機


ニュース 電子 作成日:2020年7月1日_記事番号:T00090786

キャッチャー、5G向け放熱筐体で商機

 金属筐体(きょうたい)大手、可成科技(キャッチャー・テクノロジー)の洪水樹董事長は30日、世界各国・地域で第5世代移動通信(5G)商用サービスが始まり、放熱モジュール以外に筐体そのものの放熱性能向上が求められる中、放熱薄膜など新素材の開発に着手しており、早ければ年内に5G対応ノートパソコン向けに商品化できると明らかにした。同社に対する大口顧客アップルからの部品価格引き下げ要求は強まっているとされるが、洪董事長は「第2、第3の道を探す必要がある」と、新分野での商機獲得に期待を示した。1日付電子時報などが報じた。

/date/2020/07/01/00catcher_2.jpg洪董事長は、医療分野の投資は条件が整えば、おのずと成就すると述べた。洪董事長は医学界出身(30日=中央社)

 洪董事長は、放熱性能向上の方法として、筐体のそのものの放熱性能を高めるほかに、放熱薄膜や放熱繊維を加える方法があると説明。放熱モジュール業界で採用される銅ではなく、複合素材が主体となると説明した。顧客との共同開発を進めている複合素材は薄膜で、大小問わずさまざまな形で利用可能なため、将来的にスマートフォンや装着型(ウエアラブル)端末での採用もあり得ると説明した。

5G対応で単価上昇

 洪董事長は、▽ノートPC▽タブレット端末▽スマホ──などの産業が過去数年で相次いで成熟期に入った中、ブランド各社は成長できないどころか衰退もあり、顧客は支出を抑制しており、サプライヤーに対する圧力が高まっていると指摘した。アップルを指した発言とみられる。

 洪董事長はまた、今後5G対応スマホ向け筐体の設計はさらに複雑化するため、業界の参入障壁や分水嶺(れい)となり、技術力のある企業だけが5G商機を獲得できるとの考えを示した。5Gスマホではアンテナ数や電力消費が増えることから、▽アンテナ回避の設計▽筐体の放熱性能▽良品率──を同時に考慮する必要があり、4Gスマホ向けより粗利益率や単価の上昇が見込めると期待を示した。スマホ向けでは、

大口顧客と製造工程や設計を含む開発協力を行っており、スマホ内の多くの部品に5G時代への対応が求められる中、今年の成長の原動力になるとみている。

アップル向け出荷順調

 洪董事長は、同社は最悪期を脱しており、大口顧客向けの出荷は順調と明らかにした。市場では、新型コロナウイルスの影響で、アップル初の5G対応スマホとなる見通しのiPhone新製品の部品調達が例年より遅れるとの見方が伝えられていた。

 洪董事長はまた、新型コロナウイルスの影響は残っているが、ノートPCとタブレット端末を含む主要製品向け需要は悪くないと明かした。5G対応iPhoneも加わることから、洪董事長は今年通年の売上高は過去最高の1,000億台湾元(約3,700億円)以上に達するとみている。例年の売上高は900億元余りだ。

M&Aも選択肢

 先ごろ、中国の立訊精密工業(ラックスシェア・プレシジョン・インダストリー)がiPhone組み立て参入を目指し、キャッチャーとの提携交渉を行っていると伝えられたことについて洪董事長は、現時点で他社と具体的合意に達した内容はないと述べるにとどめた。

 洪董事長はこの他、車載用や医療分野を好感しており、台湾内外でのM&A(合併・買収)も選択肢と明かした。第1四半期末時点での同社の現金および現金同等物は1,179億元と、潤沢な資金を抱える。工商時報によると、キャッチャーはノートPC用ヒンジメーカーの鑫禾科技(シンハー・テクノロジー)の株式10%を長期にわたり保有している。