ウィストロン、中国企業にiPhone工場売却(トップニュース)


ニュース 電子 作成日:2020年7月20日

ウィストロン、中国企業にiPhone工場売却(トップニュース)

記事番号:T00091099

 アップルのスマートフォン、iPhoneの組み立てに初めて中国メーカーが来年参入するもようだ。台湾の電子機器受託生産大手、緯創資通(ウィストロン)は17日、傘下で中国・江蘇省昆山にある緯新資通(昆山)他1社の全株式と業務を、年内に33億人民元(約500億円)で、中国の立訊精密工業(ラックスシェア・プレシジョン・インダストリー)に売却すると発表した。同工場はウィストロンのiPhone組み立て主要拠点で、ラックスシェアのiPhone受注シェアは台湾の他2社に次ぐ3位となるようだ。「アップル製品の受託生産王国」と言われる台湾サプライチェーンの地位が脅かされ、価格引き下げ圧力が強まる懸念がある。20日付経済日報などが報じた。

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 ラックスシェアには、iPhone全体のうち約8%の受注が移るとされ、主に中国向けに供給するようだ。工商時報は、アップルの同意と後押しがあったとし、旧機種ではなく、最新機種の組み立てを手掛けることもあり得るとの見方を伝えた。

 ラックスシェアは、当初はコネクターなどの部品でアップルのサプライチェーン入りを果たしたが、近年はワイヤレスイヤホンAirPods(エアポッド)や腕時計型ウエアラブル(装着型)端末Apple Watch(アップルウオッチ)の受注を獲得したとされ、アップル関連業務が拡大していた。

ウィストロン、インドで生産継続

 ウィストロンは、インド工場で引き続きiPhone組み立てを手掛けるとみられるが、受注シェアは減少するようだ。ウィストロンは▽台湾▽メキシコ▽マレーシア▽ベトナム▽チェコ──にも生産拠点があり、先ごろ、中国以外の生産能力について今年の見通し20~25%から来年は50%へと拡大し、生産移転を進める考えを示していた。

 ウィストロンは、グループの改革と世界展開戦略のための売却で、今後は▽第5世代移動通信(5G)▽人工知能(AI)▽車載装置▽スマート医療──など新分野の発展、重要技術への投資・開発を加速させ、事業ポートフォリオと収益の改善に努めると説明した。

 ウィストロンのiPhone関連の売上高は1,700億台湾元(約6,200億円)で、売上高構成比は約2割を占める。緯新資通の昨年売上高は1,422億1,200万元あったものの、純利益は2億9,700万元にとどまっていた。証券会社は売却により、ウィストロンは赤字続きだったスマホ事業で収益改善が見込めると指摘した。

 売却には主管機関の認可が必要だが、経済部投資審議委員会(投審会)は19日時点で申請を受け取っていないと明らかにした。

鴻海が危機感

 iPhoneは2007年の発売以来、▽鴻海精密工業▽和碩聯合科技(ペガトロン)▽ウィストロン──の3社が組み立てを手掛けており、台湾企業の独壇場だった。

 経済日報が消息筋の話として伝えたところによると、鴻海創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏は驚きを隠さなかったとされ、同社董事長の劉揚偉氏は台湾の産業が次第に侵食されるとの懸念から積極的な対応を指示したようだ。

 ラックスシェアの購入資金が中国政府の補助によるものかは不明だが、いったんラックスシェアがiPhone製造の入場券を手に入れれば、中国政府の莫大(ばくだい)な補助金の前に、台湾メーカーは苦境に立たされる可能性がある。台湾半導体業界で起こったような、中国の紅色供給網(レッドサプライチェーン)による人材の引き抜きや技術の取得が、電子機器受託生産業界でも起こる懸念がある。

 業界関係者は一方、iPhone組立工場はアップルの指定した部品を使用しなければならないため、部品サプライチェーンへの影響は軽微と指摘した。

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