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中国のラックスシェア、筐体のケーステック買収交渉(トップニュース)


ニュース 電子 作成日:2020年7月21日_記事番号:T00091121

中国のラックスシェア、筐体のケーステック買収交渉(トップニュース)

 21日付経済日報が観測として伝えたところによると、中国の立訊精密工業(ラックスシェア・プレシジョン・インダストリー)が、台湾の電子機器受託生産大手、和碩聯合科技(ペガトロン)傘下で金属筐体(きょうたい)を手掛ける鎧勝控股(ケーステック・ホールディングス)の買収に向けた交渉に入ったようだ。ラックスシェアについては、緯創資通(ウィストロン)が17日に中国・江蘇省昆山でアップルのスマートフォンiPhone組み立てを手掛ける子会社の年内の売却先として発表したばかり。部品から組み立てまでの一括受託モデルで生産コストを削減し、「中国版の鴻海精密工業」を目指す構えとされる。

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 ケーステックは21日、報道の情報源は市場のうわさと指摘し、同社は経営上の重要事項の変更を全て適時開示していると説明した。

 市場ではこれまで、ラックスシェアが台湾の金属筐体大手、可成科技(キャッチャー・テクノロジー)の中国工場と関連業務の買収を目指していると伝えられていたが、合意に至らなかったとされ、キャッチャー同様にアップル向けに供給するケーステック買収にターゲットを変更したようだ。

 経済日報によると、ケーステックはアップル向け生産規模が小さく、2年連続の赤字で、ペガトロンは売却意欲があるとされる。業界関係者は、ケーステックの当初の赤字はアップル向け筐体の良品率が改善段階にあったためだが、良品率の大幅改善後もiPhone販売が振るわなかったため赤字が続いていると指摘した。

キャッチャーへの影響大か

 ケーステック買収が事実となれば、中国の紅色供給網(レッドサプライチェーン)による価格引き下げ圧力がさらに高まることになる。iPhone向け筐体のケーステックの供給比率は現在1割未満にとどまっており、鴻海傘下の鴻準精密工業(フォックスコン・テクノロジー)とキャッチャーが合計8割以上を供給しているとされるが、今後ケーステックの供給比率が拡大しそうだ。鴻準とキャッチャーは、ミドル~ハイエンドiPhone向けの全てを供給しているとされる。

 証券会社は、ケーステックがiPhone組み立てを開始するまでにはまだ時間があるものの、観測が事実となれば、受託生産事業と中国政府の補助金に支えられ、受託生産業界だけでなく、筐体業界をもかき乱すことになると指摘。鴻海傘下でiPhone向け供給量が最大の鴻準への影響は短期的に小さいとみられるが、ラックスシェア陣営と鴻海陣営の間で単独で競争することになるキャッチャーはアップルからの受注獲得の難易度が高まると指摘した。

 一方、ラックスシェア向けに長期にわたり供給している音響部品の美律実業(メリー・エレクトロニクス)や、ラックスシェアが3割以上出資するコネクターの宣徳科技(スピードテック)──は、ラックスシェアのアップル関連業務拡大で受注増が期待できる。

 ラックスシェアは既に、アップルの完全ワイヤレスステレオ(TWS)イヤホン、AirPods(エアポッド)の組み立ての一部を手掛けている。メリーとラックスシェアが合弁で4,000万米ドルを投じ新設するベトナム工場は早ければ7月に稼働予定で、当初はヘッドホンを生産するが、将来的にはTWSイヤホンも生産する可能性がある。同工場の出資比率はメリーが51%、ラックスシェアが49%。

 なお、ウィストロンの黄俊東技術長は20日、昆山工場売却はグループの世界展開に関連するもので、同社が受託生産市場から撤退することはないと表明した。

【表】