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不倫の代償わずか10万元?姦通罪廃止後の判決で


ニュース 社会 作成日:2020年8月27日_記事番号:T00091808

不倫の代償わずか10万元?姦通罪廃止後の判決で

 ある女性が長年連れ添った夫に浮気され、不倫相手を訴えた民事訴訟でこのほど、台北地方法院(地方裁判所)が損害賠償10万台湾元(約36万円)の支払いを命じる判決を下したことを巡り、賠償額が低すぎるなどと議論が噴出している。

 台湾では今年5月、既婚者が配偶者以外と性的関係を結ぶことを罰する刑法の姦通(かんつう)罪が廃止された。これを受け市民の間では、不倫された既婚者が、配偶者の不倫相手を相手取り、民事訴訟を起こした場合の損害賠償額は、従来より引き上げるべきとの声が上がっている。

 女性は2018年8~9月、夫が頻繁に外泊することを疑問に感じ、問い詰めたところ、浮気を認めた。夫のLINE(ライン)で相手の女性とのやり取りを調べた結果、夫が既婚者であることを知っていたことも確認できた。そこで、夫婦の円満で安全、幸福な生活を破壊したとして、慰謝料として50万元の損害賠償を請求した。

 この裁判を担当した裁判官は、相手の女性と夫の間に性行為があったことを証明できず、慰謝料によって夫婦関係を修復することはできないなどとの理由から50万元は高すぎると判断し、損害賠償10万元を支払うよう命じる判決を下した。同様の裁判では従来、賠償額は20万~30万元が相場だった。

 相場を下回る賠償額の判決に対し、弁護士の周碧雲氏は、夫婦関係が修復できないことと、慰謝料を減額することは無関係と批判した。姦通罪の廃止後も、民事裁判での賠償額はあまり高まっておらず、民意と乖離(かいり)していると指摘した。

 姦通罪の廃止に反対だった民間団体も、被害に遭った配偶者に対する保障が少なすぎる、不倫行為には高い代償を支払わせるべきと主張した。

 一方、姦通罪の廃止に賛成した団体は、民事訴訟での賠償額が引き上げられれば、お金持ちなら不倫してもよいことになるのではと疑問を呈した。

 別の弁護士は、夫と相手の女性の間に性行為があったと証明できないのだから、賠償額10万元の判決は軽すぎるとは言えないとの考えを示した。

 賠償額10万元が多いか少ないかは意見が分かれるところだが、こうした議論を重ね、徐々に新たな相場が決まっていくのだろう。