家電大手の歌林(コリン)が30日、5,000万台湾元(約1億7,500万円)の不渡りを起こした。歌林は液晶テレビ事業で提携している米シンタックス・ブリリアン(SBC)が破たん状態に陥ったことにより、約60億元もの売掛金の回収に見通しが立たなくなって、経営危機説が流れている。李敦仁同社総経理は31日、主要債権行の支援を取り付けて、厳しい状況を乗り切りたいという考えを表明した。1日付経済日報などが報じた。
これまでの報道によると、歌林から8%の出資を受けるSBCは歌林最大の顧客でもあり、歌林の昨年の売上総額212億元のうちSBCは向けは140億元と3分の2を占める。しかし、SBCは業績不振で7月8日に会社更正の申請、および一部資産の売却を宣言。事実上の破たん状態に陥っている。
30日の不渡りは取引銀行の一行である万泰商業銀行(コスモバンク)が、歌林への5,000万元の融資の際に受けていた約束手形について、満期日延長の申請を拒否したため発生した。万泰銀は昨年、米プライベート・ファンドのSACが経営権を握ったことで、経営姿勢がビジネスライクになったと評されている。
この事態を受けて歌林は31日董事会を開催して、シンジケートローンを受けている最大債権行の台湾銀を含め、中華開発工業銀、台湾土地銀の計3行に支援を求めていくことを決定した。三菱電機から派遣されている董事もこの方針を支持したという。
李総経理は同日、同社の財務状況について、▽当座の現預金、5億2,900万元▽売却可能な金融資産、4億6,900万元▽流動性の高い資産、10億2,500万元──を保有するものの、短期負債が35億4,500万元に上り、SBCへの売掛金59億4,300万元の回収の見通しが立たない現状では当面は苦しいと窮状を語った。
なお、李総経理は、自社ブランド製品や代理業務を担当している三菱電器の家電製品販売には影響は及ばないとした上で、「8月は米国液晶テレビ市場の回復が始まることが見込め少量を出荷する。また、信用状ベースで比較的大型の受注がある」と語った。
「上場廃止の可能性も」
問題は今後、歌林の倒産リスクを嫌気した他の債権行が、ドミノ倒し的に融資の引き揚げを行うかどうかだ。工商時報によると、次は歌林の創業45年祭セール初日に当たる今月8日、1億元融資の初回支払い期日を迎え、中旬から下旬にかけては3,000万~4,000万元の支払い期日があるという。
工商時報は、返済が滞る場合、融資引き上げリスクは高まるとして歌林の上場廃止の可能性も指摘している。ただ、債権行の一行である中華開発工業銀の幹部は、「歌林の経営継続を原則として支持する。利息繰り延べなどで協力する可能性がある」と語っている。
歌林の取引銀行は、▽台湾銀▽開発工銀▽華南銀▽土地銀▽台湾中小企業銀▽陽信銀▽合作金庫銀▽彰化銀▽中華銀▽新光銀▽兆豊銀──の計11行。最大の債権行は台湾銀で融資額14億元、開発工銀と華南銀も7億元余りを融資している。