経済誌「天下雑誌」が台湾企業197社に行ったアンケート調査によると、ほぼ全社に当たる99.5%が「(今が)不景気だと感じる」という認識を示した。また「不景気はどれくらい続くか」という質問には、半数近くの48.4%が「1~2年」と回答した。特に金融業で悲観的な傾向が強く、同誌では「銀行の融資基準が今後かなり厳格になることを暗示しており、台湾でも米国同様、信用不安が出現するか注視が必要」と懸念を示した。同誌最新402号が伝えた。
同調査は7月21日~24日、1,982社の総経理に対しアンケートを配布し197社から回答を得た。
「不景気はどれくらい続くか」との質問に対しては「1~2年」が最も大きな割合を占め、「半年~1年」が31.6%、「2~3年」が13.2%と続いた。
業種別では、金融業で「1~2年」が66.7%を占めるなど悲観的な見方が多く、半年~1年で景気が回復すると考える金融業者は皆無だった。また「1~2年」と予測したのは従来型製造業で同47%、電子製造業で45.5%、サービス業では同45.2%に上った。中国最大の食品業者である台湾系の康師傅控股、魏応州董事長も4日付聯合報で景気動向について「まだ谷底に達していない」との見方を示し、「2~3年は資金を抱え込んで、不必要な投資は控える」と発言している。
「今年は利益が減少」、8割に
同調査では、「今年利益が減少する」と回答した企業は79.3%に上った。減少幅は「5~10%」が29.1%で最多、「25%以上」と大幅に減少するとの回答も20%近くを占めた。
産業別では、金融業および欧米を主要市場とするハイテク関連企業で利益の悪化予測が多い。ただ、利益への悪影響がどの程度になるかについて、ハイテク関連企業の27%、金融業の25%が「予測不能」と回答している。来年の利益については、全体の66.5%が「楽観できない」と答えた。
インフレ対策、些細なことも注視
大半の企業が現在のインフレ傾向に対し、スタグフレーションに陥る可能性もあるとして、生き残りを懸けて対策を打ち出している。対策のうち最も多いのが「組織の整理統合、業務プロセスの見直し」で68.6%、「人事の見直し」が50%、「価格戦略の見直し」が45.2%となっている。国瑞汽車のマネジャーは現在進める業務見直しについて、「景気の良いときにはやりたくないことは見て見ぬふりだが、今は些細なことも見つめ直さなければならない」と語った。
しかし一方で、「将来に備え社員育成の投資を増やす」と答えた企業も42.6%に上っており、不景気を次の段階のための準備期間と捉えている企業も多いようだ。
リストラ策は採らず
不景気への対応策もさまざまだ。光電産業、半導体産業で資本支出を抑えるとの表明が相次ぐなど、資金の豊富な電子製造業では43.2%が「黒字を維持して乗り切る」としている。一方、原料値上げの影響が大きい従来型産業では、59.8%が「コストを反映させ、小売価格を調整する」と答えた。
しかし、「人員削減を行う」と答えた企業は9.7%、「減給を行う」と答えた企業も1.7%にとどまり、欠員補充を行わない「自然削減」(56.6%)、「昇給を行わない」(34.3%)などの方針を採る企業が多いことが分かった。
「企業の求心力が試される」
高雄の老舗餅菓子店、「旧振南コウ餅(コウはこめへんに羔)」では、7月に3~5%の昇給を行った。李雄慶同社董事長は、「あらゆる物価が上昇する中、給料が上がらなければ生活は苦しくなる一方だ。それにコスト低減には従業員のアイデアが欠かせず、今こそ企業の求心力が求められる」と理由を語った。国瑞汽車のマネジャーも、「多くの省エネアイデアは、不景気を実際に経験した従業員からしか出てこない」と話す。