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《タロコ号脱線事故》タロコ号脱線事故50人死亡、安全対策不備か(トップニュース)/台湾


ニュース 運輸 作成日:2021年4月6日_記事番号:T00095390

《タロコ号脱線事故》タロコ号脱線事故50人死亡、安全対策不備か(トップニュース)/台湾

 2日午前9時半ごろ、樹林駅(新北市)発台東駅行きの台湾鉄道(台鉄)の特急、太魯閣号(タロコ号)が花蓮県秀林郷の第1清水トンネル直前で脱線し、50人が死亡、日本人2人を含む216人(6日午前10時現在)が重軽傷を負った。過去70年余りで最悪の鉄道事故だ。脱線は、線路脇の斜面から滑り落ちた工事用の作業車との衝突が原因で、作業車は急な斜面に適切な措置を取らずに停車していたとみられ、線路への落下防止用の柵も設置されていなかった。安全対策の不備による「人災」だとして、施工会社のほか、台鉄、交通部の管理責任を問う声が上がった。中央社電などが伝えた。

/date/2021/04/06/00train_2.jpgトンネル内の車両は変形し、救助活動が難航した。右の黄色の台座は、衝突した作業車(2日=中央社)

 タロコ号には乗員4人、乗客494人の計498人が乗車していた。2日は墓参りをする清明節(4月5日)の4連休の初日に当たり、台東県に帰省する人などで満席で、立ち席122席が販売されていた。

 タロコ号は、東部幹線の和仁~崇徳駅の第1清水トンネル手前で、路線脇にあった10.6トンのクレーン付き作業車と衝突し、脱線した。国家運輸安全調査委員会(TTSB)によると、作業車は衝突の5~7分前に斜面から滑り落ちていた。タロコ号が時速130キロメートルで走行していたと仮定すると、衝突を回避するには16.6秒前にブレーキを掛ける必要があるが、第1清水トンネルの手前にある和仁トンネルから作業車までの距離は250メートルしかなく、6.9秒しか残されていなかった。

立ち席販売で被害拡大か

 タロコ号は、先頭車両の8号車から3号車までが第1清水トンネルに突っ込み、停止した。車両の先頭部分は半分削り取られた状態で、運転士と副運転士は死亡した。死者50人の半分以上に当たる27人が8号車の乗客だった。9人は衝撃で車両の外に放り出されて死亡した。

 死傷者が多かったのは、立ち席の乗客が多かったためとする指摘が上がっている。交通部の王国材・政務次長(次官)は、死傷者リストを確認の上、今後の対策を検討すると説明した。

 負傷者216人のうち、日本人の50代男性は中等傷、20代女性は軽傷で、いずれも収容先の病院を退院した。6日午前10時時点で、35人が入院しており、うち4人は集中治療室(ICU)で治療を受けている。

 和仁~崇徳駅間は現在、単線運行している。台鉄はきょう6日までに事故車両の撤去作業を完了する予定だ。トンネルの安全検査後、報告を20日に行い、復旧する見通しだ。

「ブレーキはかけた」

 台鉄が工事を委託していた施工会社「義祥工業社」の責任者で、作業車を直前まで運転していたとされる李義祥・容疑者(49)は、保釈金50万台湾元(約190万円)で一時保釈されたが、花蓮地方法院(地方裁判所)は4日、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして、身柄の再拘束を認めた。

 交通部台湾鉄路管理局(台鉄局)は、作業車は本来平地に停車すべきところを、45度の急斜面に停車していたと指摘した。李・容疑者はメディアに対し、謝罪の意を示しつつ、ブレーキはかけていたと発言した。

/date/2021/04/06/00train2_2.jpg作業車は右の坂の上から約20メートル滑り落ちた(3日=中央社)

 蘋果日報によると、李・容疑者は、工事の現場監督を務めており、施工会社の責任者が現場監督などを兼任することを禁止する営造業法(建設業法)に違反していた。

 台鉄に対しては、線路そばの工事現場に保護フェンスや、線路への異物落下に対する警告システムなど、列車運行の安全対策について、委託先の施工会社と明確に規定していなかったとの指摘が出ている。

 施工会社の過失の度合いや、台鉄局の監督責任などについて、2カ月以内に調査を完了させる予定だ。

交通部長、辞意表明

 総統府は4日、林佳龍・交通部長が蔡英文・総統らに対し、引責辞任する意向を口頭で伝えたことを認めた。林交通部長は、被害を最小限に抑えるのが先だと話しており、辞任は事故対応が一段落してからになるようだ。