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陳前総統が巨額不正送金、政治生命に致命傷


ニュース 政治 作成日:2008年8月18日_記事番号:T00009614

陳前総統が巨額不正送金、政治生命に致命傷

 
 陳水扁前総統は16日、任期中に長男の妻の海外の銀行口座に2,100万米ドルの不正送金を行っていた疑いで、最高検察署特別捜査班より住居と事務所の家宅捜索および事情聴取を受けた。また、総統経験者としては初めて、台湾からの出境制限措置を受けた。特捜班は不正蓄財の疑いが強いとみて、巨額の資金をどのように得たのかなど汚職事件も視野に実態を解明する方針だ。かつて「台湾の子」と呼ばれ本土化推進の期待を一身に背負っていた陳前総統は、今回の事件で「台湾の恥」に転落したとメディアから激しい批判を受けている。18日付中国時報などが報じた。
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14日、苦しい表情で謝罪会見に臨む陳水扁前総統。「自分は知らなかった」「他の政治家も怪しい」などと見苦しい発言も行い、ひんしゅくを買った(中央社)

 陳前総統の呉淑珍夫人は事情聴取に対し、長男陳致中氏の妻、黄睿靚氏名義の「メリルリンチ銀行スイス」の口座に送金した資金は、前総統の4回の選挙での余剰金、弁護士としての給与、結婚した際に呉家から贈られた資金、および自身の長年の投資利益であり、「汚職で得た金ではない」と強調した。

長男夫妻を指名手配も

 しかし呉夫人は兄の呉景茂氏および黄睿靚氏の2人が送金にかかわったと認めており、特捜班は証拠保全のため同日午後、台南県の呉景茂氏の住居も捜索し、銀行口座の記録など多数の資料を押収した。

 検察は18日に呉景茂氏を召喚して事情を聴取するほか、陳前総統の選挙活動中、資金管理を担当していた林文淵・中国鋼鉄董事長にも説明を求める方針だ。また、陳前総統の長男夫妻が今月9日の時点で米国に出国していたことが明らかになっており、特捜班の朱朝亮報道官は、「長男夫妻からも事情聴取を行う予定だが、応じなければ指名手配を行う可能性もある」と語った。

「スイス側に資金の返還を求める」

 17日夜、捜査のためスイスを訪問していた台北地検の慶啓人主任検察官が帰台し、「スイス当局に対し既に司法協力の要請を行い同意を得た。今後スイス側に対し口座の凍結と資金の返還を求めていく」と語った。観測によると、スイス当局は慶検察官に対し、黄睿靚氏が最初に資金が振り込まれた「クレディ・スイスシンガポール」から「メリルリンチ銀行スイス」へ移転した資金の明細、およびその他資金洗浄にかかわった疑いのある人物のリストを提供したとみられる。

民進党離党を表明

 なお海外への不正送金を認めたことに対し民進党支持者からの非難が殺到したことを受け、陳前総統は15日、呉夫人とともに民進党を離党すると表明し、問題となった選挙資金の剰余分についてはすべて公益目的に寄付する考えを示した。しかし、陳前総統は失墜した社会的信用を回復することは不可能とみられる。

 陳総統は2000年、国民党陣営の分裂によって得票率39%で総統に当選した。台南県官田郷の貧しい農家の出身で、苦学して台湾大学法律系を首席で卒業。1979年に起きた民主化運動に対する国民党政府による弾圧事件、美麗島事件では被告人の弁護士を務めるなど、台湾の庶民出身で人権派のイメージから、当初は「台湾の子」として、国民党の金権政治の刷新と本土化推進に強い期待がかけられた。

 しかし、2期目の05年以降、自身をはじめ娘婿や側近の金銭スキャンダルが次々と明るみになって人心が離れ、今年3月の総統選挙で国民党に政権を奪回される大きな原因となった。

 長年民進党のリーダーを務め、総統退任後も党内では一定の勢力を維持していたが、今回のスキャンダルは陳前総統の政治生命に致命的な打撃を与えたとみられる。
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