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李登輝前総統、靖国神社を参拝


ニュース 政治 作成日:2007年6月7日_記事番号:T00000970

李登輝前総統、靖国神社を参拝

 訪日中の李登輝前総統は7日午前、東京・九段の靖国神社を参拝した。日本兵として戦死した兄の慰霊を目的としたものだ。中国などの抗議によってA級戦犯合祀の是非をめぐり続けられている議論に、参拝の本来の自然な姿を示して一定の影響を与えたとみられる。

 李登輝氏は午前10時すぎ、黒のスーツに身を包み、曽文恵夫人、孫の李坤儀さんともに車で靖国神社に到着した。神社の外では李氏を歓迎する日本人や台湾人約300人が、到着とともに日の丸の小旗などを振って「万歳」と歓声を上げた。同行した中嶋嶺雄・国際教養大学学長によると、李登輝氏はキリスト教徒のため、昇殿しても神道の形式にはのっとらず黙祷はしたが祝詞などは上げなかった。兄の慰霊をできたことに強く満足し、終わった後は涙ぐんでいたという。

 李登輝氏は参拝前の記者会見では、「62年間会っていなかった兄に会いに行く。(同神社が)遺霊を守ってきてくれたことに感謝の意を表する」とした上で、「個人的な家庭の事情であり、政治的、歴史的には何も考えないで下さい」と私的訪問を強調していた。

 李登輝氏を「台湾独立勢力」の指導者と見なす中国政府は、7日昼までに反応を示していないが、今後何らかの形で不快感を示すとみられる。中国外務省は事前に、「実際の行動をもって歴史問題と台湾問題を適切に処理することを望む」と日本政府にくぎを刺していた。

 日本政府は、安倍首相が「日本は自由な国なので、本人が判断されることだ」と述べるなど、基本的に容認姿勢を示していた。塩崎恭久官房長官は李登輝氏の参拝後の記者会見で、「私人としての訪問であり、政府としてコメントすることは特にない」と述べた。なお、台湾政府もこれまでのところ、何らコメントは出していない。

中国と強い対比

 今回の参拝は純粋に慰霊が目的で、東京裁判のA級戦犯がまつられていることを批判する中国の議論とは次元を異にしたものだ。中嶋氏は「メディアが作った靖国参拝問題を、問題でなくする良い契機になった」と参拝を高く評価した。靖国参拝は戦没者への慰霊の気持ちから行われる自然なものであることが、日本社会に再認識されるという意味だ。李登輝氏は意図しないことかもしれないが、靖国参拝を強く批判する中国との対比で、親日色の濃い台湾の存在を世論にアピールする効果も大きそうだ。
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