リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2022年9月8日
機械業界 電子・半導体記事番号:T00104675
耀登グループは1981年創業の車載用アンテナメーカー、伸一電子を前身とする。1986年にNECとシーメンスの第1世代(1G)携帯電話サプライチェーン(供給網)入りを果たし、1990年に耀登科技へと正式に名称を変更した後、無線技術を応用した各種製品の開発を進め、専門的な測定装置から無線通信設備の認証、アンテナの技術開発、量産までワンストップ式の設計、開発サービスを提供するまでになった。
アンテナメーカー・計測実験室・設備代理店の1社3役
同社は前身の伸一電子から数えると、既に40年近くにわたり車載用、携帯電話用アンテナの製造にたずさわっている。創業当初は携帯電話が世の中に出現した時期に当たり、同社はシーメンスやノキアから受注を獲得。第2世代(2G)携帯電話時代には一時、市場シェアが5%に達した。
耀登科技の張玉斌董事長は当時、発売されたばかりの電磁波測定装置をシーメンスの工場で目にし、同装置を手掛けるスイスのSPEAGに掛け合って大中華地区における代理権を獲得。中国市場で90%のシェアを占めることに成功し、その結果、SPEAG社を世界シェア1位に押し上げた。
このほか、電磁波分野での商機を好感した張董事長は2000年、1000万台湾元を超える資金を一気に投入し、「両岸三地」(中国、台湾、香港)で初となる電磁波の比吸収率(SAR)測定実験室を設立、計測事業へと参入した。これにより耀登科技は、アンテナに関わる一貫したソリューションを提供することが可能になった。
顧客のZTEに米国が制裁、思いがけず商機開ける
張董事長は、自社の強みは研究開発(R&D)と製品設計にあると考え、一貫して売上高の10%を研究開発費に振り向けた。他社製品の模倣が横行する市場で、低価格により受注獲得を目指したあげく競争に敗れて撤退する企業が相次ぐ中、耀登科技はIBMに倣ってアセット・ライト戦略を採用。携帯電話向けアンテナの生産能力を積極的に拡充して大量生産するといった方針は取らず、サービスの提供に注力した。
世界金融危機の前後3年の赤字を経験した後、1株当たり純利益(EPS)が1台湾元台をようやく回復したのは2014年のことだった。その2年前、耀登科技の成長が軌道に乗ってきたころ、大口顧客の1社で中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)が米国から制裁を受け、同社からの携帯電話向けアンテナの受注量は10分の1以下に減少した。
しかし耀登科技は米中貿易摩擦によりアンテナ受注を失った一方、産業チェーンが2手に分かれた影響で計測の外部委託業務や計測器調達関連の大口受注を獲得、▽計測業務、▽計測器代理事業、▽自社製品の3大事業が相互に補完し合い、変動の中で同社の経営に対応力の高さをもたらした。またアンテナ事業も第5世代移動通信(5G)ミリ波への対応で世界的に注目を集めるようになった。
5Gミリ波対応小型基地局の実機を世界初公開
2019年2月、モバイル製品の国際見本市「MWCバルセロナ」で耀登科技は世界初となる5Gミリ波対応小型基地局の実機を公開した。多くの世界的企業が相次いで同社との商談を希望するようになり、無線周波数集積回路(RFIC) 大手のインフィニオンが指名したミリ波関連のパートナー5社の中に耀登科技も含まれた。
5G用に割り当てられた周波数帯のうち、サブ6ギガヘルツ(GHz)帯(Sub6)は第4世代移動通信(4G)と技術的に近く、難易度が比較的低い。このため中国、韓国、台湾における5GサービスではいずれもSub6が利用された。しかし、▽高速大容量通信、▽低遅延、▽多数同時接続という5Gの3大特性を十分に生かすには、難易度の高いミリ波帯へのアップグレードが欠かせない。
ミリ波対応アンテナの良し悪しは演算能力と制御能力にあるため、比較的模倣が難しく、またモノのインターネット(IoT)や医療分野での応用されたこと、少量多様で高単価、統一規格が採用されていないことから、耀登科技の長年にわたる研究開発の成果が利益となって現れ始めた。
引き続きワンストップ式ソリューションを提供
耀登科技はアンテナ分野で既に30年のキャリアを有するが、先進技術の開発に積極的にリソースを投入しており、高周波数帯への対応、ハイエンド・アクティブアンテナといった需要に対応し、域内産業の競争力を引き上げている。
同社の経営戦略においては、アンテナ技術と製品を中核事業とし、実験室における計測認証サービビス、計測設備、電磁界シミュレーション・ソフトウエアの販売といった周辺業務を展開するとともに、製品規格 から研究開発、量産、製品の発売認証まで水平統合を進め、顧客がスケジュール通り製品を発売できるよう協力している。
今後の展開としては、▽広域モバイル通信(電信ネットワーク、衛星ネットワークを含む)、▽IoT、▽生体電磁界(BioEM)の3分野に注力し、技術的には▽高周波のミリ波技術、▽中周波のSub6技術、▽マルチビームアンテナ制御技術、▽無線ICタグ(RFSD)システムの設計技術、▽V2X(車車間通信・路車間通信)技術、▽電磁波のSAR測定技術を成長に向けた中核に据える方針だ。
重要技術を掌握することで顧客に継続して高品質な製品とソリューションをワンストップで提供し、他の台湾メーカーと協力して5G通信市場における強固なエコシステムを構築するとともに、無線通信技術のさらなる開発に取り組むことで台湾の無線通信産業に新たな時代を切り開こうとしている。
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