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燃料電池産業の世界的動向と台湾における発展概況


リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2022年9月29日

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燃料電池産業の世界的動向と台湾における発展概況

記事番号:T00105050

一、世界の動向
 持続可能なエネルギーの発展という目標に向け、新エネルギーの開発と再生可能エネルギーの推進が必須の状況となる中、汚染ゼロ、高いエネルギー効率、低騒音といった特質を備える燃料電池は、世界中で無限の可能性を備えたクリーンな電力源と認識されている。
 英E4techのレポートによると、燃料電池の2020年出荷量は世界全体で8万2400組を超え、前年の7万2500組から大幅な成長を遂げた。世界全体の燃料電池設備容量も2020年は1318.7メガワット(MW)と、2019年の1196.3MWから急速な増加を見せた。
 燃料電池の応用先市場は定置型、運輸型、携帯型の3種類に分けることができ、各分野の生産額予測は以下の通り:
1.従来型の電池に比べ、エネルギーの消耗と二酸化炭素(CO2)排出量を抑えることが可能なため、将来、安定した需要が見込める定置型燃料電池市場の2019年〜24年の年平均成長率は約24.2%に達し、市場規模は29億8000万米ドルから24年に109億米ドルまで成長すると予想される。


2.運輸型燃料電池市場の2016〜24年の年平均成長率は約22.11%と予想される。


3.携帯型燃料電池はコンシューマエレクトロニクス製品の電源としての需要が高まっており、2024年にかけての年平均成長率は7.1%と予想されている。


二、台湾の発展概況
 台湾の電源構成(エネルギーミックス)において約80%を占める化石エネルギーは、大気を汚染するほか、温室効果ガス排出の要因ともなっており、政府はさまざまな法整備や補助政策を通じて各方面に再生可能エネルギーの導入を奨励している。また台湾では今後、水素がエネルギー供給源の選択肢の一つとなるとの考えから、2018年に経済部能源局(エネルギー局)が定置型燃料電池システム設置に関する補助規定を発表。
 最近でも、政府機関が提案する未来の台湾におけるエネルギー革命や2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)を目指す計画に、水素エネルギーを導入すべきとの内容が盛り込まれたほか、経済部は水素エネルギー推進チームを編成し、同エネルギーの応用拡大を図っている。さらに政府が2022年3月30日に発表した「台湾2050浄零排放路径(台湾2050年ネットゼロ実現ロードマップ」では、水素エネルギーの管理に関する特別法の制定や将来的な水素エネルギーによる発電計画の推進が提案された。
 台湾では燃料電池産業が高度に発展しており、原材料、部品、周辺製品、末端の電池システムまでを全て供給可能な状態にある。台湾は世界的大手メーカーに重要部品や製品を提供できる能力を有する上、燃料電池の組み立てに関する経験が豊富に蓄積されている。
 現在、台湾の関連企業は主に5キロワット(kW)の燃料電池システムに関する研究開発(R&D)に取り組んでいるほか、▽スマートグリッド、▽産業界における余剰水素の再利用、▽電動車両、▽遠隔地における災害時の通信用予備電源など、さまざまな分野における水素エネルギーの応用も進めている。中でも高力熱処理工業(KAORI)、中興電工機械(中興電、CHEM)、鼎佳能源(Toplus Energy)、鐙鋒緑能科技(ハイパワー・グリーンテック)は現在、台湾各地に定置型発電システムを供給しているほか、バックアップ電源としての燃料電池を活用するためのモデル施設を設置している。
 一方、民間シンクタンク、台湾経済研究院(台経院)と業界団体の台湾水素エネルギーおよび燃料電池パートナー連盟(THFCP)は、長年にわたり燃料電池産業の発展に向けた取り組みを続けており、最近では澎湖県馬公市と台中市協和大心社区で5kWの燃料電池をバックアップ電源として活用するプロジェクトを進めている。

三、まとめ
 世界的に見ると、燃料電池分野をリードする地域はアジアおよび欧米に集中しており、各国とも技術開発や政策の制定において参考とすることが可能だ。一方、台湾では2022年、水素エネルギーの管理に関する特別法制定や将来的な水素エネルギーによる発電計画の推進が発表されたが、域内では依然としてバックアップ電源としての利用が中心となっており、大型の燃料電池を「ベースロード電源」(低コストで安定的に発電できる電力源)とする事例や低炭素水電解工場の設置事例は少ない。
 このため、今後は産官学、研究機関が一体となってリソースを投入すると同時に、海外における技術開発に関する情報収集と分析を進めた上で燃料電池産業の発展に向けた計画の策定と関連インフラの整備を進めることが求められている。

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