リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2025年4月9日
機械業界 製造業全般記事番号:T00121005
2025年4月、トランプ米大統領は、すべての輸入品に一律10%の基本関税を課すと発表。さらに、特定国に対しては追加で20%~46%の関税を導入するとした。台湾も対象国のひとつであり、32%という高水準の追加関税が課される。半導体製品と医薬品については、暫定的に関税が免除されている。
この新たな関税措置により、台湾企業がコストを自社で吸収する場合、利益は30%以上減少する可能性が高い。一方で、最終消費者にコストを転嫁すれば、需要減退という二次的影響も懸念される。
対米貿易黒字、649億米ドルに拡大
24年、台湾の対米輸出額は1114億米ドルに達し、総輸出額に占める比率は23.4%と、19年(14.1%)から大幅に増加した。一方、対米輸入額は465億ドルにとどまり、対米貿易黒字は649億ドルという高水準を記録している。
台湾から米国への主な輸出品目は、情報通信機器(52.0%)、電子部品(13.4%)、自動車部品(1.8%)、締結部品(1.8%)など。一方、米国から台湾への主要輸出品は、航空機および関連部品、コンピュータ周辺機器、本体、ガスタービン、貴金属製ジュエリーなどである。
電子情報産業に集中する関税リスク
台湾の電子情報産業は、24年の対米輸出額が792億米ドルに達し、対米輸出全体の71.9%を占めている。関税措置の影響は、特に以下の3分野で深刻だ。
1.半導体
半導体は関税免除の対象となっているが、世界経済の減速によりテクノロジー分野全体の需要が冷え込む恐れがある。台湾積体電路製造(TSMC)なども間接的な打撃を受ける可能性がある。
2.サーバー・ネットワーク機器
サーバーは32%の追加関税対象であり、24年の輸出額159億米ドルのうち、74%が米国向けである。
ネットワーク機器産業も売上の40%~70%を米国市場に依存しており、業界全体に深刻な影響が及ぶと予測される。
3.PC、ノートPC、スマートフォン
年間輸出額は150億米ドルを超えるが、いずれも免税対象外。原材料・組立コストの転嫁が難しく、加えて消費者需要の落ち込みも予想されるため、「コスト上昇」と「需要減退」の二重苦に直面する。
金属・機械産業に広がる打撃
1.鉄鋼・アルミ製品
鉄鋼およびアルミ製品の対米輸出額は43億ドルで、米国向けが同品目総輸出の31%を占める。鉄鋼・アルミ分野では各国ともに25%の関税が課されており競争条件は概ね均衡だが、締結部品(ナットなど)に関しては影響が大きくなる見通しである。
2.機械産業
機械産業の対米輸出額は49億米ドルで、米国向けが同品目総輸出の24%を占める。半導体製造装置の輸出は少なく、影響は限定的とみられるが、中小型工作機械や各種産業機械は大きな打撃を受ける可能性が高い。
自動車部品に影響、自転車部品は評価段階
1.自動車部品
自動車部品の対米輸出額は33億米ドルで、米国向けが同品目総輸出の48%と高水準。自動車部品の多くは米国での認証取得に約1年を要するため、短期的には台湾からの出荷が継続される見通しだが、中長期的には台湾国内での生産拠点に影響が及ぶ可能性がある。
2.自転車完成車
自転車の対米輸出額は9億米ドルで、米国向けが同品目総輸出の29%を占める。現時点では完成車への影響は限定的とみられるが、部品分野に関する影響は今後の評価が必要とされる。
石化・建材・医療機器など多岐に影響
1.石油化学・プラスチック・ゴム製品
これらの製品の対米輸出額は36億米ドルで、米国向けが同品目総輸出の14%を占める。石油化学製品とゴム製品の影響は比較的軽微とみられるが、一部のプラスチック製品は米国市場への依存度が高く、関税負担によってコスト上昇と競争力低下が懸念される。
2.建材・その他製品
建材や雑貨、家具などの輸出額は34億米ドルで、米国向けが同品目総輸出の15%を占める。スポーツ用品分野では、ブランド企業とのコスト転嫁交渉が発生する可能性があり、家具分野では他国(例:中国・ベトナム等)との関税水準の違いを注視する必要がある。
3.バイオ医薬・医療機器
医薬品は関税免除の対象だが、医療機器には32%の関税が課されている。対米輸出額は10億米ドルで、米国向けが同品目総輸出の23%を占める。関税によるコスト増加により、利益率の圧迫が懸念されている。
今回の追加関税は、単なる貿易措置にとどまらず、台湾の供給網やグローバル競争力に深く影響を及ぼす重要な課題である。企業には、コスト戦略の見直しに加え、生産拠点や市場展開の再構築が求められる局面にある。
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段婉婷
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