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台湾の酒類市場について(後篇) 〜輸入ビールシェア48%まで拡大〜 輸入勢拡大と「台湾スタイル」バーの進化


リサーチ マーケティング 台湾事情 作成日:2025年8月6日

Y'sの業界レポート

台湾の酒類市場について(後篇) 〜輸入ビールシェア48%まで拡大〜 輸入勢拡大と「台湾スタイル」バーの進化

記事番号:T00123284

 アジアのバー業界で最も権威あるランキング「アジア50ベストバー」2025年版が、7月に発表されました。台湾からは4店舗がトップ50にランクインしております。個性的でクオリティの高いバーが次々と登場する中、台湾のバー文化は国際的にも存在感を高めつつあります。
(アジア50ベストバーの結果はこちらでご確認できます:https://www.theworlds50best.com/bars/asia/list/1-50

 前篇では、統計データをもとに台湾の酒類流通規模について紹介しました。本稿では後篇として、酒類インポーターや飲食業者へのインタビュー結果を踏まえ、「主要酒類ブランド」、「消費者嗜好の特徴とトレンド」、「台湾のバー文化」の三つの視点から、台湾の酒類消費市場を多角的に読み解きます。

【前篇】〜輸入酒類、10年で55%成長〜 最新データで読む市場動向と日本ブランドの存在感
https://www.ys-consulting.com.tw/research/123283.html

多国籍酒類ブランドが集う台湾

 台湾では世界各国の酒類が飲食・小売店舗を通じて流通しており、たとえば、中華料理店ではビールやウイスキー、日系飲食店では日本酒やリキュール、洋食レストランではワインやクラフトビール、バーではカクテルなど、業態ごとに提供される酒類に特徴があります。

 小売においても、専門店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、見本市・展示会などのチャネルを通じて、多国籍なブランドが展開されています。

海外ビールブランドの台頭と台湾国産の進化

 とりわけ、輸入酒類との競争が最も激しくなっているのがビール市場です。近年では、オランダのハイネケン、米国のバドワイザー、日本のアサヒやキリンといった海外ブランドがシェアを拡大しており、なかでもハイネケンは2024年から台湾で現地生産を開始しました。供給力と価格競争力の両面で優位性を強めています。

 実際、国産ビールが市場の約7割を占めていた2015年と比べ、2024年には国産52%対輸入48%と接近しており、輸入ブランドの存在感が急速に高まっていることがわかります。

 一方、台湾国産大手ブランド「台灣啤酒(台湾ビール)」が市場の中核を担っていますが、これと差別化を図る形で、「金色三麥(SUNMAI)」、「掌門精釀(Zhangmen)」、「台虎精釀(Taihu)」などの新興クラフトビールメーカーが台頭しています。

 これらのブランドは、個性的で高品質なビールづくりに加え、自社レストランやバーといった飲食業態を展開し、独自のブランド価値を築いています。

台湾消費者の変化:低アルと多様化

 事業者へのインタビューによると、台湾の消費者には「新しいものが好きで飽きやすい」「価格に敏感でコスパを重視する」「飲酒スタイルが二極化している(あまり飲まない層と多く飲む層がいる)」といった傾向が見られるとのことです。

 また、近年は食事との相性を意識してお酒を選ぶ「ペアリング」の概念も浸透しつつあります。さらに、「飲酒人口自体は増加しているが、特にカクテルや低アルコール飲料、飲みやすいリキュールや果実酒へのニーズが拡大している」という声も多く聞かれました。少量・多様・軽めといったキーワードが、現在の台湾市場の嗜好を象徴しています(年齢別と性別別の特徴は表1参照)。

「台湾スタイル」を打ち出す個性的なバー

 記事冒頭で述べたように、台湾のバー文化は国際的な評価を受けており、「台湾スタイル」を打ち出す個性的なバーが着実に増えています。

 たとえば「掌門精釀(Zhangmen)」は、10年前にクラフトビールバーをオープン。店内にはタップバーがずらりと並び、地元のB級グルメや洗練された内装、チルな雰囲気が、台湾人はもちろん外国人観光客にも好評です(図1参照)。

 また、多くの店では、台湾人の「少量多様」「新しいもの好き」といった嗜好に合わせ、さまざまな種類を少しずつ楽しめる「飲み比べセット」を提供しています。たとえば日本酒バーでは、客の好みや気分に合わせて数種類の日本酒を小グラスで提供し、多様な風味を楽しめる工夫がなされています。

 味覚面でも、台湾産の農産物を活かしたメニュー開発が進んでおり、台湾茶や果実など地元食材を活かしたカクテルや、少量多様を楽しめるメニューなど、「台湾スタイル」を打ち出すバーが増えています。

まとめ

 今後の台湾酒類市場では、消費者の多様なニーズに応える商品開発や、パッケージ・フレーバーによる差別化、食事とのペアリング提案が成長の鍵となるでしょう。

 また、台湾ならではの柔軟性と創造性を活かすことで、国産ブランドと輸入ブランドの競争・共存、さらには異業種とのコラボレーションによる新たな消費体験の創出も期待されます。

王敍馨

王敍馨

ワイズリサーチ社副主任

 前職で社長特別補佐として、意思決定に必要な情報収集や助言を行った経験を活かし、ワイズコンサルティングに入社。効率的に任務を遂行し、期待を超える成果を追求している。これまで培った経験とスキルを最大限に活かし、顧客から高い信頼を得ている。(言語)日本語△・中国語◎

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