リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2025年6月19日
Y'sの業界レポート記事番号:T00122362
地政学リスクが現実味を帯びる中、台湾ではドローン(無人機)産業が、防衛・物流・災害対応のキーテクノロジーとして急速に台頭している。特に「台湾有事」を想定した国防・民生一体型の無人機戦略は国家主導で進められており、技術開発、量産インフラ、国際協力の面で変革が進行中だ。
本特集では、台湾ドローン産業を取り巻く政策、サプライチェーンの形成、国際連携の動向に加え、日本企業の参画可能性についても考察する。
台湾有事とドローンの軍民融合戦略
無人機は今や、台湾の国防戦略において“前線の主役”に躍り出た。レーダー回避、長距離偵察、蜂群戦術などのコスト効率の高い方法として、中国からの圧力に対抗する手段となっている。監視・標的識別・電波妨害・自爆型に加え、水中無人艇(UUV)まで用途は多様化している。さらに、農業、防災、海上監視、救急搬送などとのデュアルユース化(軍民両用技術)も進行し、戦時・平時を問わない運用前提が定着しつつある。
産業政策と育成で、クラスターを形成
経済部産業発展署の統計によると、2020年の生産額はわずか7億1000万台湾元だったが、23年は28億5800万元と4倍以上に増加した。また、台湾政府は「無人載具專案會議(無人プラットフォームプロジェクト)」を設置し、2030年までに年間生産18万機、産業規模400億台湾元を目指す国家戦略を推進している。
嘉義県の「亜洲無人機AI創新応用研究開発センター」は中核拠点として、研究・製造・飛行試験を一体化。量産拠点は「民雄航太園区」、大型機の試験拠点には「義竹測試場」が構想されている。加えて、3年で47,000機の政府調達は、国内需要創出と技術内製化を同時に推進する基盤となっている。
有事を契機とした台湾ドローン産業発展の加速
台湾のドローン産業は、雷虎科技(サンダータイガー)、中光電智能機器人(コアトロニック・インテリジェント・ロボティクス、CIRC)、神耀科技(MiTAC)など7社の整機メーカーを中心に、100社超の中小企業が参加する形で構成されている。台湾製部品の内製率向上(いわゆる「Made in Taiwan、MIT」)を目指し、フライトコントローラ、通信、光学、電源モジュールなどの国産化が進む。
また、軍事規格対応の進展により、EMI(電磁妨害)対策や全天候対応などの性能強化も図られている。特徴は、国家主導の垂直統合ではなく、分散型の柔軟な企業ネットワークにある。
国際協力と輸出市場の拡大戦略
台湾は内需の限界を見据え、早期から国際市場の開拓と連携に注力している。経済部主導の「台湾卓越無人機海外商機聯盟(TEDIBOA)」が中心となり、ポーランド、インド、韓国、ベトナムなどへの輸出が進展。2025年には、日本の「JDC(日本ドローン連盟)」とMOUを締結し、防災・災害対応分野での協業が視野に入る。これらの取り組みは、脱中国依存を意味する「非・紅色供應鏈(ノン・レッド・サプライチェーン)」構築の一環とも言える。
日本企業にとっての機会と戦略的関与
台湾の無人機産業は、日本企業にとってリスクと機会を併せ持つ存在だ。特に地上制御システム、通信暗号技術、バッテリー管理、軽量素材、AIソフトウェア分野では、技術連携・ODM供給・共同開発などを通じて参入余地が大きい。
また、防衛省・JAXAなどを通じた官民協力により、日台間で制度整合やサプライチェーン強化が進めば、アジア全体のドローン安全保障構築にもつながるだろう。
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