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【EV産業特集・第4回】EVは車輪付きのスマホにすぎない!「台湾企業の技術力と優位性」


リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2023年3月25日

Y'sの業界レポート

【EV産業特集・第4回】EVは車輪付きのスマホにすぎない!「台湾企業の技術力と優位性」

記事番号:T00108146

 前回は台湾自動車産業発展計画における三度目の挑戦について紹介した。その続きとして、EV産業において電子機器と半導体に強い台湾はどのような優位性を持っているかを紹介する。

【第3回】EV産業育成のゴールは完成車?「台湾EVサプライチェーンの形成と今後の動き」
https://www.ys-consulting.com.tw/research/108047.html

 台湾政府は自国の自動車産業を扶植したく過去に様々な政策を打ってきたが、その結果は海外自動車ブランドの組み立て工場に留まって、エンジン車の核心技術と利益を掌握する状態にできなかった。なお、電気自動車(EV)の分野に情報通信技術(ICT)企業が相次いで参入し、ICT技術を活用したスマート型の車載用電子部品の研究開発(R&D)、生産に取り組み、海外のEVサプライチェーンに食い込むことに成功している。今後は従来のAM(アフターマーケット)向け部品だけでなく、EV向け部品も台湾自動車産業の成長エンジンとなる見込みだ。


EVは車輪付きのスマホ、道路で走れるPC 

 台湾の電子製品受託生産大手5社は、▽広達電脳(クアンタ・コンピューター)、▽仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)、▽緯創資通(ウィストロン)、▽英業達(インベンテック)、▽和碩聯合科技(ペガトロン)だ。主にパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなど消費者向けの電子機器のOEM製造を手掛け、主要顧客はApple、Dell、ASUS、Lenovoなどの大手ブランドだ。スマホやPCのサプライチェーンにおいては、5社とも末端である組み立てであるため、台湾の自動車産業と同様なジレンマに陥っている。

 EVは車輪付きの大型スマホとPCの発想から、ICT産業のビジネスモデル転換のチャンスが到来したと思われ、10年前からEV関連の研究開発に着手している企業が少なくない。特にここ2年間、EVの販売台数が世界各国で急速に伸びている。新興EVメーカーと自動車大手メーカーとも、カスタマイズ製品の需要および部品調達のコスト削減を図るため、従来のティア1(Bosch、Continentalなど)を経由せず、直接台湾の電子機器メーカーにコンタクトして調達することになった。即ち、ICT企業は従来の受託生産側から技術と部品の供給側に転換することに成功した。




EV産業の発展とともに、川上のサプライヤーに転身

 台湾EVサプライチェーンには、▽プラットフォーム化とモジュール化、▽スマート化、▽電子制御ユニット(ECU)3つの強みがある。その中で、最も進んでいるのは、鴻海精密工業が推進するEVのオープンプラットフォームだ。また、複数のコンポーネントを統合するモジュールも台湾企業の得意分野で、さらにクライアントのニーズによるソフトウェア・ハードウェアの研究開発に協力することも可能だ。

 クアンタは、EV大手テスラのECUの主要なサプライヤーだ。アップル(Apple)やグーグル(Google)などの自動運転車のECUの開発にも取り組んでいると報じられている。また、ペガトロンは、テスラに必要な中央コンピューターを供給しており、同時に充電スタンドのサプライチェーンの一員でもある。なお、インベンテックは欧米自動車メーカー向けに車載用電子製品を供給できるため、チェコとメキシコ工場とも2023年に自動車産業向けの品質マネジメントシステム「IATF 16949」を取得する予定だ。

9割以上のEV部品は台湾内で調達可能

 台湾ではEV用電池以外の部品は全て調達できる優位性がある。新型コロナウイルスの流行により、2年以上にわたってグローバルなサプライチェーンが中断し、自動車用チップが不足していることが明らかになり、台湾のサプライチェーンが欠かせない存在であることが浮き彫りになっている。日本や欧米各国から台湾積体電路製造(TSMC)や聯華電子(UMC)などの半導体ファウンドリー企業に調達や増産の依頼が寄せられている。

 TSMCは車載用半導体の市場規模は2021年の410億米ドルから26年には850億米ドル、30年には1350億米ドルまで拡大し、スマートフォン用半導体の市場規模を上回るとの予測を示した。同社は21年から車載用半導体の生産能力を50%増強し、16ナノメートル以降の製造プロセスを採用した車載用新型メモリーが年内にテープアウト(設計完了)する予定だ。さらに、第3世代半導体の窒化ガリウム(GaN)半導体の技術開発と生産能力の構築も進めていると発表した。

 一方、車載用半導体大手の独インフィニオン・テクノロジーズはUMCと長期契約を締結したと23年3月に発表した。UMCのシンガポールの12インチウエハー工場「Fab12i」の40ナノメートル製造プロセスで、インフィニオンの埋め込み式不揮発性メモリー(eNVM)技術を採用した車載用マイクロコントローラー(MCU)を生産する。



 台湾はEV産業における重要な技術開発が促進され、関連産業がさらに誘致され、台湾が市場における立足点を確立する。また、EVの成熟した段階に入るにつれ、自動車の電子化レベルが高くなり、半導体産業は重要な役割を果たすことになるだろう。
 



【車載用半導体の現状と動向調査レポート】
https://www.ys-consulting.com.tw/research/salesreport/101.html

 

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