リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2023年3月22日
Y'sの業界レポート記事番号:T00108047
前回は台湾自動車産業発展計画における二度目の挑戦について紹介した。その続きとして三度目の挑戦であるEV産業について、台湾企業の参入動向を紹介する。
【第2回】二度目の挑戦「台湾の自動車ブランドの 誕生と衰退」
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温室効果ガス実質排出ゼロ(ネットゼロ)を実現するための一環として、世界各国の政府と大手自動車メーカーが車両の電動化を加速している。台湾は早い段階で電気自動車(EV)に関わる研究開発に取り組み、多くのEV部品の供給先となった。その中でも、米国の電気自動車メーカーであるテスラとの提携は、台湾のEV産業にとって重要な一石となったと言える。これまでエンジン車の発展に挫折した台湾は、電気自動車の発展に恩恵を受けることが期待されている。
初代テスラ・ロードスターのモーターは台湾製造
テスラは2003年に創業し、高性能電動スポーツカーの開発と製造に特化している。初期には、アメリカ、イギリス、台湾の3カ国がチームを組んで、アメリカが製品設計を担当し、イギリスのロータス工場で製造を代行していた。一方、コア技術である電動モーターは、台湾が製造していた。
台湾経済部商業司の登録情報によると、「台湾特斯拉汽車有限公司」が2006年6月に設立され、初期にテスラの電気車の機械と電気システムの一部を設計し、富田電機(FUKUTA)を含む関連の電気車産業サプライチェーンを確立した。2008年には、テスラは新北市林口区に工場を設置し、同年中に最初のテスラ電気自動車「ロードスター」を生産した。この車両の25%は台湾の自動車部品メーカーが製造したもので、モーターやモーターとバッテリーを接続する電子制御システムなども含まれている。これにより、テスラは台湾での拡大を検討することとなった。
しかし、当時の台湾政府とテスラは税制面で合意に至ることができず、EV関連の研究開発補助の政策も台湾国内企業に限った。さらに、テスラは製品の内製率を向上させるために多額の資金を必要とし、米国政府から4億6,500万ドル(約1,370億台湾元)の補助金を申請することになった。カリフォルニア州政府も、テスラにより優遇された税制条件を設けることに同意した。最終的にテスラは台湾から撤退し、生産ラインをロサンゼルスに戻し、2009年末に台湾支社を正式に閉鎖した。
充実した台湾のEVサプライチェーン
台湾には、EVで最も重要な電池・電機・電子制御の「三電」関連部品や車体設計などを手掛ける企業が存在し、EVサプライチェーンは充実している。テスラは台湾から撤退した後でも、約75%の部品が台湾から供給されている。モーター、ワイヤーハーネス、ホイール、充電システム、センターコンピューター、センタースクリーン、ヘッドライトなどが含まれる。▽モーターメーカーの富田電機、▽減速機(ギアボックス)を供給する和大工業(HOTA)、▽ワイヤーハーネス大手の貿聯(ビズリンク・インターナショナル)、▽充電スタンドを供給する台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)、▽自動車用構造部品の乙盛精密工業(Esonプレシジョン)など、多くの台湾企業がテスラのサプライチェーンに参加している。
その他EV産業に関わるメーカーでは、▽華城電機(フォーチュン・エレクトリック、Eバリュー)、▽康舒科技(アクベル・ポリテック)、▽同致電子企業(TTE)、▽為升電装工業(CUBエレクパーツ)、▽立凱電能科技(アドバンスド・リチウム・エレクトロケミストリー)、▽智伸科技(グローバルPMX)などが有名だ。
台湾には次のテスラが出てくる?
台湾のEVサプライチェーンには、テスラのほかに、マツダ、フォード、GM、アウディ、BMWなどの大手自動車メーカーや、Rivian、Lucidなどの新興電気自動車メーカーから、電気自動車関連部品の開発に依頼され、一部は既に量産されている。台湾企業はいち早くEV産業に参入したが、筆者の見解としては、次のテスラが出てくるとは思わない。
台湾企業はEV関連部品や車体設計などの分野で優れた技術を持ち、サプライチェーンにおいても一定の存在感を持っている。しかし、台湾のEV用電池に関しては、製造量や性能、信頼性などの面でまだまだ発展途上にあるため、大手メーカーに採用されていない。それに、テスラのように革新的なEV技術を生み出し、ブランド力や市場シェアを獲得することは容易ではない。ただし、今後の技術進化や市場環境の変化によっては、台湾企業がより大きな役割を果たす可能性はある。
では、次回は電子機器と半導体に強い台湾はどのような優位性を持っているかをテーマに、台湾企業の技術力と優位性を紹介する。
【第4回】EVは車輪付きのスマホにすぎない!「台湾企業の技術力と優位性」
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段婉婷
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