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【ワイズリサーチ】台湾機械設備製造業の景気動向


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2013年11月14日

機械業界 工作機械・産業機械

【ワイズリサーチ】台湾機械設備製造業の景気動向

記事番号:T00062529

一.主要メーカーの2013年業績比較

 台湾の機械設備産業では2013年、世界的な経済成長の鈍化、円安、中国の輸入代替政策により、多くのメーカーが業績に影響を受けている。そのうち最大の打撃を受けているのは工作機械(金属加工用機械)産業で、▽亜イ機電(イは山の下に威、AWEA)▽喬福機械工業(ラウンドトップ・マシナリー)▽程泰機械(グッドウェイ・マシン)▽福裕事業(ファルコン・マシン・ツールズ)――といったメーカーの1〜9月連結売上高は、前年同期比で大幅なマイナスを記録した。ただ、高鋒工業(kafo)は親会社の和大工業が米テスラモーターズのサプライチェーンに加わった恩恵を受けて受注が増加しており、同期連結売上高は前年同期比31.46%増の14億6,000万台湾元となった。また協易機械工業も、9月に中国および東南アジアからの受注が大幅に増えた影響で同月の連結売上高が前年同月比143.69%の急激な成長を見せ、1〜9月連結売上高(29億2,800万台湾元)の前年同期比13.31%増につながった。このほか東台精機(東台マシン&ツール)、台湾瀧澤科技の同期連結売上高も小幅ながら成長を記録した。



 一方、専用機械設備産業では、川下の繊維業界における景気回復を受けて高林(KAULIN MANUFACTURING)の13年1〜9月連結売上高が前年同期比11.22%増、伸興工業が同9.97%増となった。また米住宅市場の景気回復に恩恵を受けた巨庭機械と錩泰工業、さらに電子機器・半導体製造装置メーカーの恩徳科技(アンダーソン)、盟立自動化(Mirle Automation)、東捷科技(Contrel Technology)も同期連結売上高で前年比プラス成長を記録した。ただ、富強鑫精密工業(FCS)、志聖工業(C SUN MFG)、均豪精密工業(ギャラント・プレシジョン・マシニング、GPM)は小幅ながらマイナス成長となった。

 汎用機械設備産業では、永大機電工業、瑞智精密、成霖企業(グローブ・ユニオン)を除き、主要メーカーのほとんどが13年1〜9月連結売上高でマイナス成長を記録。うち金雨企業(ゴールドレイン)のマイナス幅が最大となった。上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)は円安の影響を受けて13年上半期の連結売上高が前年同期比18.35%減となったが、円安による脅威が徐々に薄れる中、下半期に入って以降は顕著な回復を見せており、1〜9月の連結売上高は同8.43%減とマイナス幅は縮小している。

 利益面について見ると、専用機械設備メーカーの13年上半期純利益は、全面的に前年比プラス成長を見せており、うち巨庭機械、錩泰工業、均豪精密、東捷科技は黒字転換を果たした。ただ、富強鑫のみ連結売上高の減少および粗利益率の低下が響き、同期純利益は前年同期比42.67%減と大幅なマイナスを記録した。一方、汎用機械設備メーカーの同期純利益は、エレベーターメーカーの永大機電と崇友実業(GFC)がメンテナンス業務の拡大による粗利益率上昇を受けて大幅な成長を見せた以外は全面的にマイナス成長となった。また工作機械メーカーは、亜イ機電、喬福機械、程泰機械がマイナス成長、福裕実業が赤字に陥った一方で、高鋒工業、東台精機、協易機械、瀧澤科技はプラス成長を見せた。

二.主要メーカーの現況

1.亜イ機電(AWEA)
 亜イ機電の2013年1〜9月連結売上高は、需要の低下と円安の影響を受けて前年同期比23.42%減の22億200万台湾元にとどまり、上半期純利益も同15.68%減の1億2,100万台湾元に落ち込んだ(表2参照)。程泰グループに属する程泰機械と亜イ機電は▽エネルギー▽鉄道▽造船▽風力発電——といった重工業分野での展開強化に向け、嘉義大埔美智慧型工業園区に工場を設置する計画で、13年末に着工、第1期工場は14年第3四半期の稼働を予定している。また亜イ機電は製品ラインの強化を目的とし、1億9,300万台湾元を投じて益全機械工業の60%株式を取得し、経営権を掌握することを13年9月董事会で決議した。これによりグループ売上高で15年に100億台湾元突破の目標達成を目指す。



2.高林(KAULIN MANUFACTURING)
 台湾最大手、かつ世界第3位の工業用ミシンメーカーである高林の2013年1〜9月連結売上高は、川下の繊維業界における景気回復に恩恵を受けて前年同期比11.22%増の24億1,500万台湾元を記録。また、需要回復に伴って粗利益率も上昇傾向にあるほか、販売費も減少していることから、13年上半期の純利益は1億8,200万台湾元で前年比177.08%増加した(表3参照)。

 同社の中国・寧波工場は現在、年産能力が約48万台で同社総生産能力の約90%以上を占めている。ただ、ミドル・ハイエンド製品の強化、および生産ラインの中台バランスを考慮して13年第1四半期、3億9,900万台湾元を投じて桃園に工場を設置することを決定。13年末の稼働を予定している。

3.永大機電工業
 エレベーターメーカーの永大機電は、中国政府による近年の都市開発推進を受け、同社が開拓に注力している同国中堅都市でエレベーター需要が高まっていることに恩恵を受けている。また同国のメンテナンス水準が低いことが原因でエレベーター事故が頻繁する中、中国では2013年6月29日に「中華人民共和国特種設備安全法」が成立し、14年元日から施行されることとなった。同法規ではエレベーターの製造に規範を設けるとともに、エレベーターの改造およびメンテナンスは当該製品の製造元または製造元が委託した業者が行わなければならないと規定したため、中国各地で認証を受けた業者にメンテナンスを委託されるようになった。これを受けて永大機電はメンテナンス事業が大幅に業績を伸ばし、同社全体の13年1〜9月連結売上高も前年同期比23.05%増の140億8,900万台湾元に成長した。また粗利益率の上昇により13年上半期の純利益も6億5,600万台湾元と、同271.58%の大幅増となった(表4参照)。

三.2013年・第4四半期の景気見通し

1.▽中国政府による輸入代替政策の継続▽1米ドル=100円前後で推移する日本円為替相場▽米国の債務問題——などの影響を受け、台湾機械設備産業の2013年第4四半期販売額は依然マイナス成長が続く見通しとなっている。

 中国では近年、消費の拡大を促すカンフル剤としての投資が経済成長をけん引するといった効果が失われ、成長率も縮小する中、同国政府は継続的に輸入代替政策を実施しており、これが台湾の機械設備産業の中国輸出に打撃となっている。また、1米ドル=100円前後の円安傾向が続いていることで日本の機械産業が競争力を高めており、台湾メーカーの受注に大きな脅威となっている。このほか2013年上半期、米国経済には好転の兆しが見えたものの、量的金融緩和政策(QE)縮小観測や債務問題が同国製造業者の投資意欲に影響を及ぼしており、これが13年第4四半期における台湾機械設備産業の米国輸出にダメージを与えている。

 国内需要について見ると、台湾における13年の民間固定資本形成は、半導体ファウンドリー業者が設備投資を拡大していることがけん引役となり前年比プラス成長を維持しているものの、同年7月には電子・半導体設備の輸入規模が大幅に縮小するなど半導体業界でも設備調達需要が弱まっており、下半期は国内企業の投資意欲がさらに低下する見通しとなっている。このほか電力料金の値上げも企業の経営コストに影響を及ぼし、投資の縮小につながるとみられるため、第4四半期の国内向け販売額はさらに減少すると予測される。

 全体的に見て、▽中国の貿易障壁▽円安による脅威▽米国での需要減▽国内の需要不振——といった要因により、台湾機械設備産業の13年第4四半期販売額はマイナス成長が続く見通しだ。

2.台湾機械設備産業の2013年第4四半期販売額見通しを分野別に見ると、工作機械、専用機械設備、汎用機械設備のいずれもマイナス成長が見込まれる。特に工作機械のマイナス幅が最も深刻と予想される。

 川下における需要減、および競合国の脅威が増したことにより、台湾機械設備産業各分野の2013年第4四半期販売額は全面的にマイナス成長が見込まれる。特に工作機械分野のマイナス幅が最も深刻と予想されるが、その要因は、台湾製工作機械が従来、一定の競争力を確保する上で強みとしてきたコストパフォーマンス上の優位が円安および中国の輸入代替政策によって脅かされていることにある。さらに現在、米国における量的金融緩和政策(QE)縮小観測や債務問題が同国製造業者の投資意欲に影響を及ぼしている。また米国の自動車販売台数は13年9月、すでにマイナス成長に落ち込んでおり、同国の自動車メーカーが投資を縮小し、台湾製工作機械の米国向け輸出に打撃となる可能性も出ている。

 一方、専用機械設備産業も円安と中国の輸入代替政策により、13年第4四半期販売額はマイナス成長が予測されるほか、電子業界の設備投資が一時的にストップしている状況の中、そのマイナス幅は第3四半期よりも拡大する見通しとなっている。なお汎用機械設備産業は、民間固定資本形成が成長を維持していることで恩恵を受けるほか、政府が積極的に製造業者の台湾Uターン投資促進政策を進めていることから国内需要が上向く見通しだ。ただ、海外市場の需要が低下しているため、第4四半期販売額の年成長率は依然マイナスから抜け出せないとみられる。

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