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【ワイズリサーチ】先端製造の推進政策に関する政府への提言


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2015年6月25日

機械業界 製造業全般

【ワイズリサーチ】先端製造の推進政策に関する政府への提言

記事番号:T00062864

新しい製造技術の出現
 2008年以降に発生した世界金融危機が失業率の上昇を引き起こしたことや、近年、中国の製造業で人件費が上昇していることがきっかけとなり、先進国はこれまでの「金融重視、工業軽視」的思考を転換し、製造業が再度、各国の経済成長における重点項目となっている。さらに過去10年間のIT(情報技術)およびオートメーション化技術の加速度的発展に伴い、まったく新しい製造技術が生み出されており、先進諸国ではインテリジェント型製造技術を国家発展の中心に据えた政策を打ち出している。

 台湾も世界のトレンドに影響を受けることは避けられない上、台湾における将来的な人口高齢化および少子化に伴う生産力低下問題の解決を目指し、経済部と科学技術部(科技部)は基礎技術、精密機械、製造工程、インテリジェント化システム、ソフトウエア、通信、アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)、先進材料など先進製造技術(AMT)の開発にリソースを投じている、しかし、スイスとシンガポールにおけるAMTおよび製造業のインフラ設備に対する投資を比較した一部研究によると、スイス企業の収益にはプラス効果が見られたものの、シンガポール企業には逆の効果が見られた。このことを考慮すると、将来、台湾が先端製造システム分野において政策的支援を行う際に、先進技術やインフラ設備に対する投資を促すのか、またはグローバルなサービス指向型の発展を目指すのか、政府は慎重に検討する必要がある。

「勝者が全てを得る」リスクに対策を
 従来、台湾政府の政策は革新的なサービスの開発よりも技術開発に重きを置いてきたが、ビジネスのデジタル化が進み、「勝者が全てを得る」といった趨勢がますます顕著となる中でリスクを避けるため、今後は重要技術の研究開発(R&D)に加え、サービス指向型の先端製造政策に注力する必要があると考えられる。生産のインテリジェント化により大企業が「全てを得た」場合、中小企業の生存空間が圧迫され、大きなダメージを受けると予想される。またここ数年、ITや生産プロセス技術の活用により各プロセスの管理コストが低下し、マネジャークラスの重要性が増す一方で中間管理職やブルーカラー労働者の重要性が低下、社会における階級および貧富の格差が拡大する可能性が高まっている。

 このため、先端製造に関する政策を推進する上で政府は、企業に技術を活用することでブルーカラー労働者が排除され、社会に「ブラックホール」が生み出されることのないよう、サービス指向型の概念を生産体系に導入することを検討する必要がある。インテリジェント型の生産に必要とされる革新的なサービスを創出できれば、ブルーカラー階級をサービス業へとキャリアチェンジさせ、「勝者が全てを得る」ことによる衝撃を抑えることが可能となる。

 強力な中小企業を多く抱えるという点で台湾と共通した産業構造を持つドイツでは工場の自動化、ネットワーク化を目指して推進する「インダストリー4.0(第4次産業革命)」に取り組んでいる。しかし、台湾の中小企業は経営規模や生産額が小さく、資金的な余裕がないため、政府はこういった中小企業に対し、単に生産モデルのデジタル化を支援するのみならず、中小企業に見合ったオンライン・ツー・オフライン(O2O)システムを構築し、付加価値が高く、スピーディーで人間性を重視した生産体制の実現を目指すべきと考えられる。

 また米国やドイツといった先進国では先端製造分野における人材育成と同等のリソースを労働者のキャリアチェンジ促進に投じている。これに倣い、台湾においても世界的な潮流に乗り遅れないよう教育部が先端製造分野の人材育成計画を策定すると同時に、労働者に先端製造に必要な技能を習得させ、構造的な失業を抑制するなどの補完措置が労働部に求められる。

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