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【ワイズリサーチ】ギリシャ国民投票、中国株暴落の
台湾ファスナー産業への影響


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2015年8月6日

機械業界 金属

【ワイズリサーチ】ギリシャ国民投票、中国株暴落の
台湾ファスナー産業への影響

記事番号:T00062888

ギリシャは首相主導による国民投票を強行し、EU(欧州連合)との協議においてよりよい条件を求めている。しかしEUは強硬な姿勢を崩さず、全世界で一時期株価が下落した。また同時期、中国株式市場でも民間企業の不良債権のため、経済成長が失速しはじめた。中国株は2015年6月までの最高値と比べると、15年7月初めには30%も下落した。これは時価総額21兆人民元に相当する。

 現在、世界はすでに国境を超えた経済体を形成している。各国間の貿易が盛んであり、台湾も無関係ではいられない。EUは台湾ファスナー産業にとって第二の輸出相手先だ。また中国は最大の輸出競争相手である。本文では、この2つの市場で同時期に発生し市場を震撼させた問題が、台湾ファスナー産業に与える影響について述べる。


ギリシャ国民投票、脱ユーロ問題がもたらす影響

 ギリシャの国民投票、さらに脱EU問題は、EU成立後PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)経済が直面してきた問題の中で最も現実味を帯びた悪夢と言えるだろう。EUは台湾ファスナー産業にとって米国に次ぐ第二の輸出相手先であり、輸出総額の33%を占めている(図1参照)。



2014年、台湾ファスナー産業の輸出額のうち最も成長率が高かったのが対EU輸出額だ。対EU輸出額は434億台湾元で、前年比21%増だった。EU加盟国の中では、第2位の対ドイツ輸出額が114億台湾元(市場シェア9%)、第5位の対イギリス輸出額が54億台湾元(同4%)だった。ドイツ、イギリスへの主要輸出製品は鉄製ねじやワッシャーなどで、建設業で用いられる。14年、台湾ファスナー産業の対ギリシャ輸出額は1億台湾元で、台湾の対EU輸出額のわずか0.2%、世界市場への総輸出額の0.07%を占める。ギリシャだけであれば台湾への影響は大きくはないが、ギリシャの脱EUが現実となればその債務はEUが負うこととなり、短・中期的にEU経済が低迷することは必至だ。台湾ファスナー産業も一定の影響を受けることになる(図2参照)。

中国株の暴落がもたらす影響

 台湾ファスナー産業の最大輸出相手国は米国だ。また米国の最大輸入相手国は台湾、第二は中国で、これはEUも同じである。近年、米国とEUは中国製の鉄鋼ファスナーに対して反ダンピング関税措置をとっており、これが中国ファスナー産業を窮地に追い込み、台湾製品が中国製品に取って代わっている(図3参照)。



 今回の株価暴落の原因は、中国の民間企業が長期にわたって乱発した債権が不良化したためだ。ファスナー産業の多くは中小企業で、2009年にEUが反ダンピング課税措置を開始した後、約2,000社の中小企業が倒産した。今回の株価暴落でさらに約20%の企業が倒産する可能性がある。台湾と中国の下級ファスナー製品は、ともに主要製品が鉄製ねじだ。このまま中国政府が相場の下落を止めることができなければ、中国ファスナーメーカーの倒産が相次ぎ、台湾製品に対する需要が増加すると見られる。

 2015年7月13日、ギリシャとEUは初の共通認識に達し、ギリシャのEU離脱は回避された。しかしドイツはギリシャ債務の減免を拒否しており、国有資産で基金を設立して銀行へ資本を注入、銀行の民営化を進めるよう要求した。現在、この問題はギリシャ国会で協議されている。ギリシャの国民投票が終わって脱EUが回避され、ユーロ安とエネルギー価格の下落がEU経済に追い風を吹かせている。短期的にはEU経済は安定し、15年における各産業の業績は前年より成長するだろう。

 中国市場は、中国政府が民間企業の不良債権を完全に処理しきれるかが問題だ。しかし長期にわたって引き伸ばされている地方政府債の問題があり、短期間での解決は難しいだろう。現在、中国政府は株の売買停止を命じており、企業は半年内は株を売ることができない。また1,200億人民元で市場救済ファンドを設立するなど対策をとっている。しかしこのような方法は一時的に市場を安定させることができるものの、今後は地方政府債の問題が適切に処理されるかどうかにかかっている。中国製ファスナー製品にとっては反ダンピング課税が大きな問題で、欧米は課税期間5年をさらに延長する見通しだ。中国ファスナー産業はこのような厳しい挑戦に直面しており、これは台湾ファスナー産業にとって世界最大の標準ファスナー市場を獲得するチャンスだといえる。しかしファスナー産業は技術、資金ともに参入が容易であるため、東南アジア各国もこのチャンスを狙っている。台湾メーカーは製品、技術の研究開発を進めて市場参入のハードルを高め、高利益率の製品を生産することで長期発展の道が開けるだろう。

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