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【ワイズリサーチ】台湾機械産業の2015年Q4と今後の展望


リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2016年3月17日

機械業界 電機機械

【ワイズリサーチ】台湾機械産業の2015年Q4と今後の展望

記事番号:T00063687

一、2015年Q4の重要トピック

1.中台共同の工作機械規格推進

 「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の流れが世界的に進む中、台湾機械工業同業公会(TAMI)と中国機床工具工業協会(CMTBA)は2015年10月21日、中台におけるスマートマニュファクチャリング推進に向けた準備段階として、共同でインテリジェント型工作機械の技術規格制定を進めると表明した。中台政府は機械産業発展に向け、双方の強みを生かした相互協力をいかに進めるかについて積極的に検討を行っており、特にインテリジェント型工作機械の通信プロトコル、通信方式に関する統一規格が機械対機械、企業対企業、産業対産業の間の連結において非常に重要であり、これが実現してはじめてスマートマニュファクチャリング時代の商機獲得が可能となると認識されている。

 なお、中国における需要の鈍化が台湾工作機械産業に少なからぬ影響を及ぼしているが、同国では現在、コストパフォーマンスの高いロボットアームと工作機械による生産単位(セル)の自動化、および生産能力と製造品質の向上、コスト削減を実現することで製造業のアップグレードを図っており、依然、こういった分野における需要は存在する。
 自動化システムを運用する上で最も重要となるのは、ハードウエアとソフトウエアを含め生産設備システムの連結にある。そしてハードウエアの連結を進める際には各機械のインターフェースが規格化されているかどうかが問題となる。

 さらに台湾と中国は今後、自動車部品の自動化生産ラインに関するネットワーク規格の制定を優先して推進すると予想される。これにより将来、台湾の完成車メーカーは生産ラインの自動化を進める際、設備の規格を変更する必要がなくなり、中国の自動車部品メーカーも生産ラインと生産単位(セル)の自動化を高品質かつ低価格で実現できるなど中台双方が恩恵を受けることになる見通しだ。

2.ラムリサーチによるKLAテンコールの買収

 米半導体製造装置世界4位のラムリサーチは2015年10月21日、同5位の米KLAテンコールを106億米ドルで買収すると表明。合併後、新会社のトップを務めることとなったラムリサーチのマーティン・アンスティス最高経営責任者(CEO)は、合併のシナジー効果および生産能力の拡充により、20年までに売上高を6億米ドル増加させると抱負を語った。両社の14年度売上高合計は約60億米ドルに達し、ASMLを抜き世界2位の半導体製造設備メーカーが誕生したことになる。報道によると、今年半ばには買収手続きが完了する見通しだ。
  光学式自動欠陥検査技術に強みを持つKLAテンコールは同分野において70%以上のシェアを占めており、さらにラムリサーチ社と統合することで豊富な研究開発(R&D)リソースを手にすることとなる。このため、同社と競合する台湾の漢微測科技(エルメス・マイクロビジョン、HMI)は大きな脅威に直面するだろう。

3.遠東機械グループの自動化生産ライン開発

 遠東機械工業(FEMCO)傘下の発得科技(FATEK)は近年、大型トラックと乗用車向けアルミ製ホイールの全自動生産ラインの開発を手がけている。同社が開発した各種ホイール加工機は14〜22インチの乗用車用ホイール向けの「WHL−55型」から26インチホイール向けの「WHL−68型」、スピーディーで高効率なツインタレット設計の「WHL−F50型」、さらに大型の立形ホイール加工機や鏡面加工が可能なハイエンド機種など製品ラインナップが充実している。同社製品のほとんどが加工品質、精度、生産効率において業界水準を上回っている上、創業60年を超えるブランド力も加わり、米国、中国向け自動化生産ラインの出荷は既に10本を超えている。
  台湾の金属工作機械の年間生産額は約1,500億台湾元と工作機械産業全体の最大比率を占め、そのうち70%以上を輸出に頼っているが、近年、中国や韓国などの後進メーカーの急速な成長および大幅な円安による日本製品との価格競争に直面し、台湾の工作機械メーカーは厳しい経営状況に陥っている。

 一方で中国では人件費の上昇や労働力不足問題の深刻化に伴い、各種メーカーが新たな加工モデルを積極的に模索しており、特にアルミ製ホイールメーカーなど金属加工業者は、いわゆる「3K(汚い、危険、きつい)」産業に属することから労働力不足がより深刻な状況となっていることから、生産の自動化やスマート化が積極的に検討されている。こういった中、台湾の工作機械メーカーの生産ラインに関する研究開発(R&D)は、従来の機械設計や組み立て技術だけでなく、自動制御や周辺設備(ロボットや無人搬送車など)に関する技術、製品の製造プロセスに関するノウハウを蓄積してはじめて商機獲得が可能となると言える。

4.電子メーカーのロボット開発

 華碩電脳(ASUS)が社内に設置した研究機関「ダヴィンチ実験室」ではロボットの研究にこれまで7年を費やしており、既に人工知能(AI)および拡張現実(AR)向けクラウドサービスに関する技術の開発に取り組んでいる。なお同社では、鴻海精密工業や広達電脳(クアンタ・コンピュータ)、上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)が注力する産業用ロボットとは異なり、家庭向けロボットを開発の中心に据えており、今年第2四半期にも正式に製品を発売する計画だ。

 一方、クアンタ傘下の広明光電(クアンタ・ストレージ、QSI)は3年前より産業用ロボット分野に参入し、ロボット機構、サーバーからの制御、視覚技術、ソフトウエアなどの統合を進めている。同社が創設したロボットブランド「Techman Robot」は2015年12月、東京で開催された世界最大規模のロボット見本市「2015国際ロボット展(iREX)」で協働産業用ロボット「TM−5」を発表した。

 また宏碁(エイサー)は米マサチューセッツ工科大学(MIT)発の家庭用ロボット開発スタートアップ企業、Jibo(ジーボ)に出資を行っており、同社製品のアジアにおける代理販売を手掛ける方針だ。なおJiboは今後、クラウドコンピューティングやモノのインターネット(IoT)を利用してその応用範囲を拡大すると予想される。

 台湾の電子業界はこれまで十全な産業チェーンを生かして、高いコストパフォーマンスの高い製品をスピーディーに出荷することで世界的地位を築いてきたが、中国「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」の急速な台頭を受けて現在、多くの企業が大きな脅威にさらされている。このため大手電子メーカーの多くは、イノベーション力および開発力を生かしてロボット分野に参入することで競争力の再構築を図りたいと考えている。

二、今後の展望
 台湾工作機械産業では今年、以下の6点が留意すべき点として挙げられる。

(1)欧米、日本メーカーが「ハイエンド機種の低価格化」戦略により中国におけるロー〜ミドルエンド製品市場の開拓を進めている。

(2)米韓および欧州連合(EU)・韓の自由貿易協定(FTA)締結の影響を受け、台湾と韓国の間で欧米向け輸出における関税率に2〜5%の格差が生じている。

(3)中国における工作機械製品の在庫水準上昇と生産能力過剰、さらに製造業の成長鈍化を受けてロー〜ミドルエンド製品の輸入が減少している上、生産能力と在庫の過剰の解決策として東南アジアなど国際市場が利用されている。

(4)原油価格の下落および米国の量的緩和(QE)政策終了に影響を受け、アジアの新興国市場および東南アジア市場の需要が下降すると予測される。
 (5)米国製造業の回復力は予測されたほどの力強さを見せておらず、このため工作機械市場の需要も小幅に低下する見通しとなっている。

(6)日本円とユーロの対米ドルレート下落が日本および欧州連合(EU)のメーカーと台湾メーカーの製品に価格差縮小をもたらしており、台湾メーカーの受注や製品価格に影響を及ぼしている。
 以上の要素を考慮し、総合的に見ると台湾工作機械産業の2016年生産額は前年比5.2%減の1,281億6,000万台湾元と予測される。
 自動化生産設備分野については、世界的に「インダストリー4.0」およびスマートマニュファクチャリングの趨勢が強まる中、メーカー各社は今後も継続して生産単位および生産ラインの自動化を図り、各種産業用ロボットの導入を進めると考えられる。こういった中、台湾でも行政院が昨年9月に始動させた労働生産性の向上を目指す「生産力4.0発展プラン」が自動化およびロボット市場の需要を喚起すると予想される。ただ過去2年間、世界的な経済成長の鈍化が企業の設備更新意欲にマイナス影響を及ぼし続けており、スマートマニュファクチャリング関連設備の調達が大幅に成長する可能性は低そうだ。

 全体的に見ると、台湾自動化設備産業の2016年生産額は446億6,000万台湾元で前年比1.3%のマイナス成長に陥る見通しだ。また台湾産業用ロボットの生産額は同1.5%増の64億4,000万台湾元、サービス型ロボットの生産額は同2.8%増の37億台湾元、ロボットサービス産業の生産額は同2.4%増の127億4,000万台湾元と予測される。

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