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【ワイズリサーチ】2016年台湾工作機械産業、未来への転換期


リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2016年3月3日

機械業界 電機機械

【ワイズリサーチ】2016年台湾工作機械産業、未来への転換期

記事番号:T00063696

ㄧ、台湾工作機械産業の現状
 台湾工作機械産業の年生産額とその成長率の推移を見ると、2013年の生産額は1,410億台湾元で前年の1,585億台湾元から11%の減少、14年は欧州経済の回復により、各国企業の景気に対する信頼感が改善し、各種機械設備の調達を強化したことから、輸出比率が76.9%と輸出主導型の当産業の生産額も前年比7.0%増の1,509億台湾元と恩恵を受けた。しかし15年は、エネルギーおよび原料価格の大幅な下落に伴い、新興市場の製造業における稼働率と受注が目に見えて低下。
 中国では経済構造の立て直しが進められたことで成長が一時的に鈍化し、欧米でも景気回復の勢いが同年当初の予測を下回った上、工作機械産業においてライバルとなっている日本やドイツのメーカーが為替相場の下落により価格競争力を高めたことが台湾メーカーに大きな打撃をもたらし、中旬より景気が悪化。同年1〜11月の台湾製工作機械の輸出額は前年同期比15.0%減少。主力製品のマシニングセンタ、旋盤の販売額も同9〜14%のマイナス成長となった。台湾の工作機械産業は高度な輸出主導型となっているため、主要輸出先国の製造業で景気が冷え込んだことから輸出額が減少。工業技術研究院(工研院)産業経済趨勢研究センター(IEK)も当産業の2015年生産額予測を2度下方修正し、前年同期比10.4%減と2013年を下回る水準に引き下げた。

主力製品の価格競争激化で大手メーカーに打撃
 2015年における台湾製工作機械の製品別販売比率は、▽マシニングセンタ、27.5%▽NC旋盤、20.3%▽その他NC工作機械(NCドリル、フライス盤、ボール盤、磨、研磨機、パンチプレスなど)、11.1%▽その他金属成形機、11.1%――となった。経済部の統計によると、台湾工作機械産業全体の15年1〜10月販売額は前年同期比8.1%減となったが、うち減少幅が比較的大きかったのは▽マシニングセンタ、前年同期比9.0%減▽NC旋盤、10.8%減▽その他旋盤、18.9%減▽その他NC工作機械、14.0%減▽液圧プレス、14.4%減▽放電加工機、11.6%減▽その他金属成形機、14.7%減――で、主力製品はいずれも全体平均を上回るマイナス成長に陥った(図1参照)。


 台湾製ミドル〜ハイエンド工作機械の主な販売先は欧米市場で、主な競合は日本とドイツメーカーとなっているが、日本政府の円安政策と欧州版量的緩和(QE)政策がもたらすユーロ相場の下落効果により、台湾メーカーの主力製品は同市場において厳しい価格競争に直面している。このため、2015年1〜11月における業界主要メーカーの合計売上高は前年同期比6.2%の減少を記録。うち喬福機械工業(ラウンドトップ・マシナリー)、福裕実業、協易機械工業(SEYI)、台湾瀧澤科技は同10%を超える減収となった。なお当産業の景気信号は15年5月から景気後退を示す「黄青」が点灯。これは現在、業界の販売額と売上高が過去5年間の平均を下回っていることを意味する。


二、2016年の景気展望

 2015年初頭、国際原油価格の大幅な下落や米国経済に対する好感、欧州経済の景気回復を受けて国際通貨基金(IMF)など国際機関は世界経済に対し楽観的な見通しを示していた。しかし同年半ば、予想に反して世界経済は低調となり、中国での景気低迷、新興国における投資に疲弊感が表れたこと、エネルギーおよび原料価格の下落が続いたことなどを理由に、主要研究機関は15〜16年の経済成長予測を相次いで下方修正した。IMFは15年10月、同年および16年の世界経済成長率予測をそれぞれ3.1%、3.6%といずれも0.2ポイント引き下げ、世界的に消費と投資の冷え込みが続くとの判断を示した。

 2014年の経済成長率が3.77%だった台湾では、15年の成長率について原油価格の下落、輸出の好調、国内消費の拡大など楽観的な見方が占めていたが、製品価格の下落が輸出に打撃を与えたほか、世界的な不景気や株価下落の影響を受けて内需も低迷。通年の経済成長率は1%を確保できるかどうかという厳しい状況に陥った。

  2016年については、世界経済の本格的な復調や原料価格の下落に歯止めがかかる時期が第2四半期にずれ込むとの見通しに加え、米国の利上げによる影響、台湾総統選挙の結果を受けた経済政策の転換など不確定要素が大きいことから、現時点で慎重な見方が大勢を占めている。こういった中、国内の研究機関は台湾の16年経済成長を1.8%〜2.3%と予測している。


 台湾工作機械産業の2016年生産額についてIEKは、東南アジア、米国、英国経済は比較的安定して推移するとみられたものの、為替相場の変動により依然として工作機械市場の価格競争が続くと予想されること、台湾製工作機械最大の輸出先となっている中国からの受注減が響き、前年比0.2〜2.1%減の1,325億台湾元とほぼ横ばい、またはマイナス成長となると予測している。


三、2016年のキーポイント=IEK
 台湾工作機械産業にとって今年の主なチャンスと課題は、▽中国における産業構造の再構築がもたらす新たな商機▽日本政府の円安政策によるミドル〜ハイエンド製品市場の価格競争▽中核部品の自国内生産化——の3点となるとみられる。

中国市場における商機
 中国政府は2015年9月、製造業発展10カ年計画「中国製造2025(メード・イン・チャイナ2025)」の重点分野と技術ロードマップを発表。これによると同国では今後、工作機械需要がミドル〜ハイエンド製品に移行すると予想される。その中国で今年、産業構造改革が軌道に乗り、製造業の需要が再び上向いた場合、新型通信技術産業、ハイエンドNC工作機械、ロボット、航空宇宙産業用設備、海事建設用設備、高級船舶、先進軌道交通機関用装置、新エネルギー車といった分野で需要が大幅に高まると期待される。また工作機械の加工精度、加工速度、機能、信頼性などに対する要求のレベルが向上すると同時に、高度なコンピュータ制御システム、サーバー設備に関するソフトウェアサービスや軸受など重要部品の需要も大きく上向くと見込まれる。

 このほか、中国政府が2015年10月から16年末にかけて排気量1,600cc以下の小型車に対する減税措置(税率を10%から5%に低減)を実施していることが地場自動車メーカーや外国ブランドの販売台数の大幅増につながっており、生産の自動化需要を喚起している。こういった中、台湾の工作機械メーカーは短期目標として、単一装置で複数の加工を可能とすることで加工時間、加工精度の向上を実現する工作機械製品に注力している。一方、長期的には製品のカスタマイズ化、および専用機の分野における価格競争力の強化、または技術力の日独レベルへの引き上げと高いコストパフォーマンスの維持により中国市場での競争力を高める必要がある。

日本メーカーとの市場競争
 なお2012年9月以降、日本円の対米ドルレートは大幅な下落を続けており、台湾製工作機械は輸出市場において日本製品との厳しい競争にさらされている。日本の輸出統計によると、13年の工作機械輸出額は前年比30.9%減(米ドル換算)、特に中国向けは50%超のマイナス成長となったが、日本製工作機械の在庫消化が進み、新たに生産された製品が販売されるようになるにつれて輸出状況は目に見えて改善しており、14年の輸出額は前年比11.9%増。さらに日本円で計算すると成長率は21.5%まで拡大。一方で台湾製工作機械の14年輸出額はわずか5.8%(米ドル換算)成長にとどまった。

 また2015年1〜10月、世界および中国における景気の冷え込みに影響を受けて日本の工作機械輸出は前年同期比11.4%の減少を記録。しかし台湾の輸出額は同14.5%減と日本を上回るマイナス幅となっており、ここ2年間の輸出では日本に遅れを取る状況が続いている。

 日本と台湾の工作機械の主な輸出先は大きく重なっているため、台湾メーカーはコストパフォーマンスの高さを生かし、ミドルロー〜ミドルエンド市場を主要ターゲットとし、ミドルハイ〜ハイエンド市場をターゲットとする日本製との棲み分けを図っている。しかし昨年、日本メーカーがミドルエンド市場における販売強化に向け製品ラインナップの拡大を進めるとの観測が浮上。これが事実となれば、台湾メーカーの立型CNC旋盤、5軸マシニングセンタといった製品が真っ先に打撃を受けると予想され、特に精密加工装置の需要が高い欧米市場で最も競争が激化すると見込まれる。これに対し台湾メーカーは、日本製品との価格競争を避け、カスタマイズ化やアフターサービスの強化などによる付加価値および代替不可能性を高めることで対抗する姿勢を見せている。

国産制御装置の開発

 なお工作機械の制御装置については大手メーカーが日本とドイツに集中する中、台湾の工作機械メーカーが使用する制御装置も日本製をはじめとする輸入製品が主流となっている。精密機械発展中心(PMC)の2014年統計によると、台湾製工作機械に使用される制御装置のうち、国産品は23%にとどまり、外国製が77%を占めた。

 台湾メーカーが制御装置の分野で発展を目指すに当たり、中国における2014年〜16年の原産地規則(PSR)を準拠することで海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)に基づく優遇関税を享受できるというメリットのほか、同国も制御装置の国産化に積極的な姿勢を示していることも注視していく必要がある。中国政府は自国工作機械産業のレベルアップを図る上で、制御装置が非常に重要な鍵を握ることを熟知しており、ロー〜ハイエンド制御装置の国産化に強い意欲を持っている。現在、中国の南京数控公司はドイツのシーメンスと共同で既に「808D」制御装置を開発しており、最大5軸制御が可能な同製品は中国で生産されるローエンド工作機械に使用するには十分な水準に達していると評価されている。

 これに対し台湾の制御装置メーカーの目指すべき道の一つは、新代科技(SYNTEC)や研華宝元数控精密(アドバンテックLNCテクノロジー)のように、世界的大手メーカーのサーボモーターと駆動装置に自社開発の制御インターフェースとソフトウエアを組み合わせたPCベースの制御装置により、比較的精度の要求が低い工作機械での応用をターゲットとするもの。もう一つは台達電子(デルタ・エレクトロニクス)のように、サーボモーター、駆動装置、制御インターフェース、ソフトウエアの全てを含む、主にクローズループ方式の制御装置が考えられる。台湾、および海外(特に中国)において台湾製制御装置の採用意欲、客層を高めたいと考える場合、まず基本的なデジタル制御性能の強化が必須条件となり、その上で顧客の需要に応じたヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)などカスタマイズサービスの提供により信頼度を高める必要がある。

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