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【ワイズリサーチ】台湾ボールねじ産業の世界市場進出


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2019年8月29日

機械業界 工作機械・産業機械

【ワイズリサーチ】台湾ボールねじ産業の世界市場進出

記事番号:T00085598

ボールねじは需要が減少、在庫が増加
 台湾ボールねじ産業は、米中貿易摩擦の影響を受けて川下メーカーの需要が減少し、川上メーカーも業績が悪化している。経済部統計処によれば、台湾当産業の生産額は2018年8月に13億1,000万台湾元で過去最高を記録した。しかし、米中貿易摩擦が勃発すると受注が減少し、18年12月の生産額は7億1,000万台湾元まで落ち込み、成長率はマイナスとなった。しかし、18年は第1~3四半期の成長率がプラスであったため、通年の生産額は129億台湾元で前年比46.7%増となり、過去最高に達した。19年に入っても、製造業の投資意欲の弱まりを受けて生産額は低迷が続いた。ボールねじを使用する産業機械や工作機械などの主要産業(全体の42.3%)だけでなく、ハイテク設備や自動化分野からの需要も減少した。これによって在庫が増加し、19年4月の在庫額は9億5,000万台湾元で、価格競争が引き起こされることとなった。

 台湾ボールねじ産業の直近2年間の輸出額を見ると、2018年上半期は生産額が成長したが、下半期は縮小した。これは中国の輸入需要が減少したためだ。18年10月の台湾当産業の輸出額は1億6,000万米ドルに達したが、12月の成長率はマイナスに転じた。対中国輸出が全体の5割を占める台湾当産業は、米中貿易摩擦の影響で大きな打撃を受けている。
 米中貿易摩擦の勃発前から、ボールねじの主要メーカーは顧客の需要に合わせて世界の重要エリアで製造および販売拠点を展開していた。台湾で最大のシェアを持つ上銀科技(ハイウィン)も世界各地で生産と販売サービスを行ってきた。現在、中国、米国、日本および韓国などに工場を有し、欧州では子会社が販売と各種サービスを提供しているが、それでもやはり米中貿易摩擦の影響は大きい。

製造業サプライチェーンの移転とその影響
 米中貿易摩擦はメーカーの受注と生産、経営に影響を及ぼしている。原材料価格の上昇に加えて、受注の減少、顧客の流出、為替レートの変動といった問題を受けて、製造業各社は経営戦略や調達計画の調整を進めるようになった。既存生産ラインへの受注配分や投資計画の見直し、工場またはサービス拠点の移転などが検討される中、部品サプライヤーもこれに合わせた動きをとらざるを得ない状況となっている。
 中国に工場を設置している工作機械メーカーの多くは中国国内での販売を強化するだけでなく、米国以外への輸出を増やすことで関税問題を回避し、リスクを分散させている。このような状況で注目を集めた市場は、東南アジアや台湾だ。崴立機電(WELEメカトロニック)は2019年初めに12億台湾元を投資して「歓迎台商回台投資行動法案」の認可を得た。同社は新竹県新埔鎮に工場を新設し、台湾での投資を拡大させる計画だ。また、程泰集団は嘉義県の大埔美園区に20億台湾元を投資して工場を設置する予定である。
 米中貿易摩擦がどのように展開していくのであれ、中国から資金が離れていくことは確実だ。応用産業は東南アジアやメキシコ、インド、あるいは製造業が成熟した主要経済国にまで分散が進んでおり、世界製造業の新たなバランスが生まれている。この2~3年の調整期は、台湾機械製造業にとって最も厳しい試練であるといえるだろう。

製品戦略とトレンド
1.全球伝動科技
 全球伝動科技(TBIモーション)は設備を自主開発し、生産効率の向上とコスト削減を図っている。現在、同社は転造および研磨ボールねじに内部循環式、外部循環式、エンドキャップ式ナットを合わせた全方位的な製品ラインナップを整えている。また最近リリースされた研磨級ボールねじOFVシリーズは高い剛性を備えている。外部循環式ナットタイプは安定性と負荷容量を高め、寿命を長くした。エンドキャップ式ナットタイプは高速の作動スピードを実現するだけでなく低ノイズかつ低ダスト、高DN値といった特長があり、工作機械、電子生産設備、医療設備などに適している。OFU/OFIダブルナットシリーズは高い安定性と負荷容量、長い寿命だけでなく電力と空間の節約もでき、内部空間が小さい設備に向いている。



2.台湾上銀
 世界的なインダストリー4.0ブームの中、台湾上銀はスマート製造向けのボールねじを中心に開発を進めている。センサーによってねじの状況をモニターして即時的なフィードバックを行い、設備の故障を予測して警告する。これにより早めのメンテナンスを行うことができ、不良品を減少させ、生産コストを抑えることができる。このほか、同社は2019年に行われた工作機械「研究発展創新産品」コンテストで、C3冷却ボールねじがNC工作機械部品部門で優等賞を獲得した。台湾上銀が開発したスマートモジュールは、ボールねじの寿命予測や温度のモニタリングに加えて、冷却機の運転制御もできる。温度をプラスマイナス0.3度に抑えることで、加工精度や製品品質だけでなく、良品率も大幅に高めることが可能だ。

製品価値を高め、貿易摩擦の影響から脱する
 世界製造業は米中貿易摩擦の影響を受けて投資が縮小して生産が減少しており、メーカーはより安定した生産環境と市場を求めている。このような動きは、米中貿易摩擦の勃発前にすでに始まっていた。これまでも製造業は労働コストの安い東南アジア諸国連合(ASEAN)地域へ生産ラインを移転させて、政治・経済の変化によるリスクを避けてきた。米中貿易摩擦はこの動きを加速させたに過ぎない。また、顧客も関税の影響を減少させるために現地、あるいは近隣国家での生産を求めており、既存のサプライチェーンは大きく変化している。しかし、この世界製造業の再構築は新たな勝者を生む可能性も秘めている。
 短期的には、中国に設置した生産ライン、とくに構造が複雑なサプライチェーンを他国へ移転させることは容易なことではない。中国に設置された工場は競争力を高めることで生き残りを図ってきた。例えば、生産の自動化から高付加価値化製品の発展に至るまで、台湾ボールねじ産業は設備のグレードアップ需要に応えることで中国市場に参入し、シェアを維持し、グレードの低い中国製品を押しやって地位を築いてきた。このほか、移転を計画中、あるいはすでに実施済みの生産ラインについては、最終製品の目標市場とサプライチェーン、あるいは工作機械やゴム・プラスチック機械などの生産設備メーカーの投資動向を観察し、今後の生産および販売、サービス拠点を調整していくべきであろう。

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