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【ワイズリサーチ】台湾金属製品産業のデジタル化推進と課題


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2020年7月2日

機械業界 技術応用

【ワイズリサーチ】台湾金属製品産業のデジタル化推進と課題

記事番号:T00090833

一、定義
 デジタル化とは、メーカーが▽モノのインターネット(IoT)▽人工知能(AI)▽クラウドコンピューティング▽ビッグデータ――などの技術を導入することによって、運営効率を向上させる方法・手段を指す。主に▽経営戦略や運営プロセスの調整▽従業員の技術向上▽外部企業との提携――などに活用される。
 現在、多くのメーカーが情報通信(ICT)設備の導入によって、運営効率の向上を図っている。台湾企業の情報通信設備に対する年間投資額は、固定資本形成の約15%を占めており、投資割合では経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均水準に相当する。投資は主にハードウェアに集中しており、ソフトウェアやデータベースに対する投資額は固定資本形成の約2%で、OECD加盟国の平均である10%には届いていない。
 台湾金属製品産業のメーカーは中小企業が中心で、従業員数50人以下のメーカーが全体の93%を占めている。デジタル化に対する投資意欲は低く、紙のデータをデジタルに移行する初期的な段階にある。また、台湾金属製品産業は生産の外部委託が多く、多品種少量生産、B2B(企業間取引)であることから、デジタル化のコストが高くなり、効果が減少するという課題がある。このため、デジタル化の推進はその他の産業より困難となっている。

二、推進状況
 ▽欧州連合(EU)▽ドイツ▽韓国――では3割以上のメーカーが企業資源計画(ERP)システムを利用して作業プロセスの最適化を図っている。これに対し、ERPシステムを導入している台湾メーカーは全体のわずか2.6%しかない。
 また、EUでは約2割のメーカーがインターネットを利用して製品を販売しているが、アジアのメーカーは電子商取引の利用度が低く、韓国では11.4%、台湾では7.2%にとどまっている。
 行政院主計総処の2016年工業・サービス業調査報告によると、台湾金属製品産業のメーカー数は4万3,000社で、パソコンとインターネット設備の普及率は81.7%だった。製造業26業種の中で普及率は第20位で、製造業全体の平均値と中央値を下回ったことから、台湾金属製品産業はICT設備への投資意欲が低いことが分かる。
 ICT設備の利用状況を見ると、大部分のメーカーはマイクロソフトの「ワード」と「エクセル」の使用にとどまっており、ERPシステムや顧客関係管理(CRM)システムを導入して、内部資料の分析と管理者の意思決定に利用しているメーカーはわずか4.4%だった。また、インターネット上で営業情報を提供しているメーカーは約5割で、今後、インターネットを通じて業務の拡大、競争力の向上を図ることがトレンドとなるだろう。しかし、インターネット上で越境販売を含む製品販売を行っているメーカーの比率は非常に少ない。

三、課題
 台湾金属製品産業のメーカーは加工・自動化設備に対しては積極的に投資を進めているが、業務のデジタル化に対しては消極的である。これに対し、業務のデジタル化に成功したとあるメーカーは「情報管理システムの導入評価を行う際、台湾当産業は成功例が少なくコストパフォーマンスを正確に判断できないことが、メーカーの投資意欲に影響している」と指摘した。また、生産の外部委託が多く、多品種少量生産であるという産業の特徴に加えて、ICT技術者と台湾当産業を理解しているデジタル化サービス業者が少ないことから、メーカーが市販のソフトウェアやERP管理システムを導入する際、システムの最適化に時間がかかる。このため、デジタル化の速度が遅くなり、導入意欲も低下すると分析している。
 台湾当産業メーカーは、中価格製品のOEM(相手先ブランドによる生産)受注を主に手がけている。インターネットを利用して製品を販売する場合、最大の課題は送料、決済サービスへの手数料、倉庫料金などのコスト増加だ。このため、受注が小規模、あるいは海外に営業拠点がないメーカーの場合、製品競争力が現地小売業より弱くなる可能性がある。これが、中小企業が多い台湾当産業がインターネットによる越境販売を推進する障害となっている。

四、まとめ
 台湾金属製品産業には▽労働力不足▽製品規格や納期などに対する顧客リクエストへの対応▽設備稼働率の向上▽ベテラン従業員の技術継承――など解決すべき課題がある。メーカー各社は効率向上と生産プロセスの最適化を実現すべく、デジタル化を推進することで競争力の向上を図っている。
 政府は産業政策の一環として情報公開プラットフォームを設置し、メーカーのデジタル化の事例を公開することができる。あるいは、メーカーにデジタル化の適性評価を提供して、適切なモデルを見つける支援を行い、中小企業のデジタル化推進意欲を向上させる。
 さらに、▽高付加価値▽就業機会の拡大▽構造転換の急迫性――などの面から代表となる産業(手動工具産業、水回り金物産業や家具産業など)を選出し、モデルケースを構築することで、台湾産業のデジタル化を促進するべきだ。

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