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第409回 期間の定めのない賃貸借契約/台湾


ニュース 法律 作成日:2021年12月27日_記事番号:T00100292

知っておこう台湾法

第409回 期間の定めのない賃貸借契約/台湾

 台湾法上の不動産賃貸借契約は、期間の定めのあるものと期間の定めのないものの2種類に分けられます。前者は、明確な開始日と終了日のある賃貸借契約を指します。後者は、開始日だけはありますが、終了日がありません。

 期間の定めのない賃貸借関係の発生には、当事者が賃貸借契約締結時にあえて賃貸借期間の終了日を約定しないケースのほか、法律の規定により期間の定めのない賃貸借関係が発生する、以下の2つのケースも含まれます。

1.民法第422条では、「不動産の賃貸借契約は、その期間が1年を超える場合、証となる書面により締結するものとし、証となる書面により締結していないときは、期間の定めのない賃貸借と見なす」と規定しています。

2.民法第451条では、「賃貸借期間満了後、賃借人が依然として賃貸借物件の使用収益をし、賃貸人が反対の意思表示を即座にしなかった場合は、期間の定めなく契約を継続するものと見なす」と規定しています。

退去要求できるか

 期間の定めのある賃貸借契約と期間の定めのない賃貸借契約の主な違いは、前者では賃貸借期間の終了時に家主が借家人に退去を要求して建物を取り戻すことができます。しかし後者の場合、家主は下記の土地法第100条の規定に適合して初めて建物を取り戻すことができるという点です。

土地法第100条:「賃貸人は、以下の各号に掲げるいずれかの事由によらない場合、建物を回収してはならない。

1.賃貸人が回収して自ら居住するまたは改築するとき

2.賃借人が民法第443条第1項の規定に違反して他人に転貸したとき

3.賃借人が滞納する賃料の金額が、保証金を充当する分を除いて、2カ月分以上となったとき

4.賃借人が建物を法令に違反する使用に供したとき

5.賃借人が賃貸借契約に違反したとき

6.賃借人が賃貸人の建物または附帯する財物を損壊し、相当の賠償を行わないとき」

 上記の土地法第100条の要件はかなり厳しいため、実務上、多くの家主は、初めから借家人と期間の定めのある賃貸借契約を締結していますが、賃貸借期間満了時に借家人が建物を引き続き賃借することに反対しないことで、契約が前記の民法第451条に基づき、期間の定めのない契約になるようにしています。その結果、建物の回収が困難になり、紛争が生じています。

 前述の説明から、期間の定めのない賃貸借契約は借家人にとって有利であり、家主にとっては不利になります。ですので、貴社においては立場や必要に応じて、自身に有利な契約を締結することをお勧めします。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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