馬英九政権が急ピッチで進めている対中経済開放政策が、スケジュールの見直しを迫られることになった。台湾側の希望と中国の現状・政策の間に食い違いが生じているためで、劉兆玄行政院長は24日、経済部に対し、中台間で開放項目の確認ができるまで、開放政策の推進を一時的に見合わせるよう指示した。25日付工商時報は、有害粉ミルク事件によって、対中経済交流拡大のマイナス面を懸念する世論が高まったことで、今後開放スピードが減速する可能性を指摘している。
中国製汚染粉ミルク事件で売り上げが減った台中市の太陽餅店「阿明師」では24日、輸入管理が不適切として政府への抗議活動が行われた。やみくもに対中交流を拡大していくと、台湾側が泣き寝入りを強いられる事態も起きかねない(中央社=24日)
馬政権は7月までに、▽週末直航チャーター便の運航▽中国人観光客の訪台▽企業の投資額上限を純資産の60%までに緩和──など、第1段階の対中経済開放政策を実施。当時は8月に台湾各産業別の投資規制緩和案を、9月に中国資本による台湾投資開放案をまとめる予定で、馬総統は7月の株価下落の際、「中国資本に対する開放計画を8月に前倒しして、株式市場に中国資本を導入しよう」とまで発言していた。しかし、これらは現段階でも実現していない。
これは、中国資本の台湾投資ついては、中国が対外投資を奨励する産業と台湾が投資受け入れを希望する分野に隔たりがあるためで、中国の対外投資は鉱山・石油などエネルギー分野が多い一方で、製造業やサービス業などは少ない。また、同日付経済日報によると、中国が投資を認可している海外135の地域に台湾は含まれていない。
このため、行政院は10月下旬に予定される海峡交流基金会(海基会、台湾)と海峡両岸関係協会(海協会、中国)の中台公式対話で意見を擦り合わせ、具体的な項目を確認してから改めて対中経済開放を推進することを決めた。尹啓銘経済部長は特に金融業については、「双方が開放対象をリストアップしてこそ効果が期待できる」と語っている。
こうした現況について経済日報は、「馬政権の開放政策は、中国政府の誠意ある協力を頼りにしすぎ、相手の意図をまるで確かめていなかった」と拙速を批判している。
パネル・半導体の投資緩和、早くて12月
尹経済部長は、台湾のパネル前工程や、半導体の先端技術などの対中投資開放は、10月中に産業別の計画案をまとめ、蕭万長副総統が座長を務める財経諮問グループで協議し、早ければ12月中に発表できる見通しとしている。10月の中台対話で議題とできるかは、現段階ではまだ不明のようだ。
「国台弁主任の訪台、時期が不適切」
なお、中国製有害粉ミルクが台湾でも出回り、メーカーや販売店が次々と中国製の粉ミルクを原料を使った飲料やパン類を撤去する動きが広がっており、一般市民の間で改めて中国製品、ひいては中国社会の体質に対する不信感が広がっている。10月の中台対話についても民進党の蔡英文主席は、「陳雲林国務院台湾事務弁公室主任が、今の時期に台湾を訪問することは適切ではない」と語っている。有害粉ミルク事件を受けて、対中開放はより慎重な姿勢で行うよう求める世論が今後強まるとみられる。