鴻海精密工業は18日、インド子会社が、アップルから3327万米ドルで設備を取得したと発表した。業界関係者は、アップルが今秋発売するとみられるiPhone15（仮称）シリーズを組み立てるためと予測した。別の子会社がインドにiPhone部品工場を建設するとの報道について鴻海は19日、現時点では発表すべき決定事項はないとコメントした。インドでもグループ内で部品から組み立てまでを担う垂直統合で、競合に差を付ける考えがあるようだ。19日付経済日報が報じた。

　鴻海はこれまでにインド工場で▽iPhoneXR、▽iPhone11、▽iPhone12、▽iPhone13、▽iPhone14──を組み立てている。主要生産拠点のチェンナイ工場に、アップルから取得した設備を搬入するとみられる。

　鴻海がインドでiPhone生産を拡大するのは、米中対立など地政学的リスクの高まりを受け、アップルが中国からの生産移転を進めていることに加え、鴻海の中国河南省の鄭州工場で昨年10月以降、新型コロナウイルス拡大や従業員の抗議デモ発生で、稼働率が大幅に低下、出荷台数が減少し、他社に受注が流れたことが背景にあるようだ。

部品工場、近く協議か

　インド最大の日刊英字紙タイムズ・オブ・インディアの報道によると、南部カルナータカ州政府の高官は、鴻海傘下の富士康工業互聯網（フォックスコン・インダストリアル・インターネット、FII）がiPhone部品を生産するため、880億インド・ルピー（約1500億円）を投じて工場を建設する計画で、同州トゥムクルにある日系企業優先の日本工業団地の用地100エーカー（40.5ヘクタール）を提供すると語った。

　インド日刊英字紙デカン・ヘラルドでは、新工場はiPhoneの▽機械部品、▽ディスプレイ、▽筐体（きょうたい）──を生産し、鴻海がカルナータカ州デーバナハッリに建設する組み立て工場に供給すると報じられた。

　FIIの鄭弘孟・董事長が近く、カルナータカ州政府の高官と協議するとみられている。

　鴻海は19日、報道内容を確認したところ、同社はインド工場に関する協定を締結しておらず、投資額も約束していないので、事実に即していないインターネット上のうわさだと指摘した。

　鴻海グループは、FIIのほか、鴻騰精密科技（FIT）などもインドに進出している。中国生産と同様の垂直統合で、▽和碩聯合科技（ペガトロン）、▽緯創資通（ウィストロン）、▽中国の立訊精密工業（ラックスシェア）──に差を付ける狙いがあるとみられる。

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