発がん性の疑いがあり、台湾を含む世界各国で食品への使用が禁止されている工業用染料、スダンIII（中国語・蘇丹紅3号）が中国から輸入された粉末唐辛子（チリパウダー）などから検出され、多数の食品メーカーや飲食店に出荷されていた問題で、高雄市政府衛生局は10日、粉末唐辛子を輸入販売していた津桟国際貿易の調査で、合計9製品からスダンIIIが検出されたとして、同社に6カ月の営業停止処分と累計438万台湾元（約2000万円）の罰金を科すと発表した。台湾高雄地方検察署（地検）の捜査によると、責任者の男は2018年以降、津桟国際など台湾で10社、中国で1社を設立して輸入販売し、スダンIIIが次々と検出されても、10社の間で出荷量を調整するなどして、検査の目をくらましていた。11日付自由時報などが報じた。

高雄市政府衛生局は8日、津桟国際などの調査を行った（高雄市衛生局リリースより）

　高雄市政府衛生局は、津桟国際の製品の検査で8日夜までに、スダンIIIを5～22ppbの濃度で検出した。原料や製造販売された製品は合計21トン以上で、▽台北市、▽桃園市、▽新竹県、▽南投県、▽台中市、▽彰化県、▽雲林県、▽台南市、▽高雄市──の食品メーカーや飲食店など13社に出荷されていた。

薛瑞元・衛福部長は10日、不合格製品の3カ月間の輸入停止期間を延長する可能性があると語った（10日＝中央社）

　男は、中国の農家から粉末唐辛子を仕入れて一次加工し、津桟国際など台湾の10社経由で輸入、加工した上で、川下のメーカーに販売していた。台湾で家族や友人の名義を借りて▽津桟国際貿易、▽佳廣国際貿易、▽杰展国際食品、▽初衣食伍素食食品、▽廣元国際貿易、▽釜山國国際貿易、▽玉記昌、▽海順国際食品、▽淞鋒実業、▽龍海同記食品──の10社を設立、中国で龍海同記食品を設立し、妻の姉ら3人に倉庫の管理、品質管理、会計を任せていた。

　高雄地検は8日、責任者の男と倉庫管理の女ら4人を取り調べ、食品安全衛生管理法違反で男ら3人の勾留請求を行った。

　スダンIIIは、赤色の工業用染料で、食品安全衛生管理法で、食品への添加が禁止されている。

　薛瑞元・衛生福利部（衛福部）長は10日、今後、水際検査で不合格になった業者の住所や責任者が同一でないか確認し、検査を増やすなどの対策を取ると表明した。衛福部食品薬物管理署（TFDA、食薬署）は8日、中国製の粉末唐辛子を対象に実施している溯及（そきゅう）検査について、今後1カ月間は検査の対象を過去3年間に輸入された全ての中国製粉末唐辛子に拡大すると発表した。

　津桟国際、佳広国際貿易、海順国際食品は同じ倉庫を使用しており、林淑芬・立法委員（民進党）は8日、10社のうち少なくとも9社が同一の責任者で、同一の住所を登記していると指摘していた。

　香辛料や調味料の有名メーカー、小磨坊国際貿易（トマックス・エンタープライズ）は、21年に男から粉末青唐辛子（グリーンチリパウダー）を仕入れたが、検査でスダンIIIを検出したため返品していた。男は、返品された製品を別のメーカーに出荷していた疑いがある。

別ルートでもスダン混入

　スダン混入はこれにとどまらない。新北市の保欣企業が中国河南省の三禾薬業から輸入した粉末唐辛子からもスダンIIIが検出されている。桃園市政府衛生局の調査で、金禾味食品香料が保欣企業から仕入れた粉末青唐辛子を使用し、唐揚げ粉など合計15種の製品を計49社に出荷していたことが分かった。

　保欣企業は、スダンIII検出を知りつつ、出荷先に告げず、衛生当局にも報告していなかった。新北市政府から罰金200万元が科される。

回収150トン以上

　衛福部によると、8日までに回収した粉末唐辛子や製品は152.1トン。

　王必勝・衛福部政務次長は、中国に限定せず、全ての輸入唐辛子に対し100％のロット別抜き取り検査を行うと語った。

　食薬署は昨年12月11日から今年6月10日まで、中国から輸入する唐辛子に対し100％のロット別抜き取り検査を実施している。不合格となった中国の粉末唐辛子メーカーや輸出業者21社の製品の輸入を2月20日から3カ月間、停止している。

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