民進党の頼清徳氏（64歳）がきょう20日、総統に就任した。総統府で就任を宣言し、「民主主義と平和、繁栄の台湾を作る」をテーマに就任演説を行った。就任演説で、中華民国台湾は独立した主権国家だと強調した。両岸（中台）関係については、蔡英文・政権の路線を踏襲し、台湾海峡の現状維持と、平和と共栄を訴えた。中国に対し、台湾への「文攻武嚇」（言論による攻撃と武力による威嚇）を停止し、中華民国が存在している事実を直視するよう呼び掛けた。中央社電などが伝えた。

頼・新総統は就任演説で、台湾を民主主義の世界のMVPにすると語った（20日＝中央社）

　頼・総統は就任演説で、台湾海峡の平和と安定が世界の安全と繁栄に不可欠なことは既に国際社会の共通認識だと強調し、台湾は、平和が唯一の選択肢であることを堅持すると強調した。

頼・新総統（前左）と蕭・副総統（前右）（20日＝中央社）

　蔡・前総統が2021年10月に掲げた▽中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない、▽自由民主、▽主権、▽「中華民国台湾」の前途を台湾の人民の意思で決定する──から成る「4つの堅持」を継承し、卑屈にも傲慢にもならず現状維持に努めると語った。

　中国が、対等で尊厳が守られる原則の下、対立を対話に、封じ込めを交流に置き換え、共に平和と共栄を追求することを望むと語った。まずは観光旅行の往来再開や中国人の台湾留学の再開から取り組もうと中国に呼び掛けた。

　頼・総統は、昨年7月に掲げていた▽抑止力、▽経済の安全が国家の安全、▽世界の民主国家とのパートナー関係、▽安定かつ原則のある両岸（中台）関係──の「和平（平和）四大支柱（Four-pillar plan for peace）」を実行すると語った。

　中国のさまざまな脅威に直面する中、価値観を共有する国家・地域との関係を強化する「価値観外交」で、世界の民主主義国家と平和の共同体を形成し、抑止力で戦争を回避し、実力で平和を実現すると表明した。

　就任演説で、民進党は存在を認めていないが、1992年に中台が「一つの中国」を確認したとされる「1992年の共通認識（92共識、92コンセンサス）」や「一つの中国」についての言及はなかった。

AI・半導体で投資誘致

　内政については、立法院（国会に相当）で民進党、国民党、台湾民衆党のいずれも議席の過半数を獲得しなかったが、これは新たな政治局面で、与野党がそれぞれの理念を共有し、人々の利益や国家の利益を優先することで、国政をスムーズに進められるはずだと語った。

　経済面では、台湾は世界のサプライチェーン（供給網）の鍵となる立ち位置で、▽半導体、▽人工知能（AI）、▽軍需、▽セキュリティー、▽次世代通信──の「五大信頼産業」を発展させ、台湾投資を呼び込むと語った。

　4月3日に発生した花蓮地震について、台湾だけでなく、海外からの関心とサポートに感謝を示し、今後も全力で復興に取り組むと語った。

海外から500人超

　頼・総統と蕭美琴・副総統（52歳）は20日午前9時、就任宣言を行い、韓国瑜・立法院長（国民党）から中華民国の国璽（国印）や総統の印などを受け取った。

　午前9時25分、卓栄泰・行政院長、潘孟安・総統府秘書長、呉釗燮・国家安全会議（国安会）秘書長を任命する就任後初の公文書に署名した。

　野党第1党、国民党の朱立倫・主席は、前日に頼・新総統と蕭・新副総統に祝意を伝えたものの、式典には出席しなかった。野党第2党、台湾民衆党の柯文哲・主席は、同党の立法委員（国会議員に相当）8人と共に出席した。

　頼・総統は1996年に直接選挙が始まって以来、5人目の総統だ。民進党が8年（総統の任期は1期4年、2期まで）以上、政権を握るのは初めて。

　正午から、日本の国会議員代表団との昼食会に出席した。午後は日米、カナダなどの訪台団などと面会し、午後6時半から台南市で、各国・地域の来賓を招待して晩餐会、国宴を開催する。

　台湾と外交関係を結ぶ友好国や日米欧などから、51組・508人の来賓が訪台した。

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