第2野党、台湾民衆党の柯文哲・主席（党首、休職中）は5日夕方、台北市長在任中（2014年12月～22年12月）のショッピングセンター（SC）跡地の商業施設とオフィスビル「京華広場（コアパシフィック・プラザ）」開発計画をめぐる不正な利益供与の疑いで、再び勾留され、身柄を拘置所に送られた。台湾台北地方法院（地裁）は5日午後の審理で、柯氏が違法と認識しつつ容積率を法定の560％超まで引き上げ、開発事業者の威京総部集団（コアパシフィック・グループ）に200億台湾元（約900億円）の不当利得をもたらしたとして、貪汚治罪条例（腐敗防止法）の図利罪（公務員の不正利益供与罪）違反の疑いが濃厚だと判断した。図利罪で有罪となれば、懲役5年以上が科される。6日付中国時報などが報じた。

柯氏は5日夕方、手錠をかけられ、台北看守所（拘置所、新北市土城区）に移送された（5日＝中央社）

　台北地裁は5日、証拠隠滅や口裏合わせの恐れがあるとして、接見（面会）禁止、通信禁止の勾留を命じた。

　報道によると、地裁は、▽柯氏が応暁薇・台北市議会議員（国民党）との食事会以降、京華広場開発案件に積極介入し、容積率引き上げを検討した台北市政府都市発展局（都委会）の局長らから何度も違法になると指摘されつつ、承認印を押した、▽威京総部集団の沈慶京・主席が違法な利益を分配した後、柯氏の妻や子の銀行口座に出所不明な入金があった、▽柯氏の自宅の家宅捜索で、すぐにドアを開けず、柯氏のスマートフォンを押収したところ、トーク履歴が削除されていた──ことや、柯氏の供述と、勾留されている威京総部集団の沈・主席、応・台北市議、彭振声・元副市長の供述が一致しないことから、勾留を決定したようだ。

　調査によると、威京総部集団の沈・主席は当時、容積率引き上げのため、応・台北市議に4740万元の賄賂を渡した疑いがある。

容積率引き上げに承認印

　柯氏は8月30日に自宅や事務所の家宅捜索を受け、31日未明にいったん逮捕されたものの、9月2日未明に、保証金なしで釈放された。地裁は当時、柯氏は容積率引き上げを多数決で決定した台北市都市計画委員会に出席しておらず、専門家でもないため、検察の証拠では犯罪事実を認定できないと判断していた。

　釈放された柯氏は、容積率が840％まで引き上げられていたことは、今年3〜4月まで知らなかったと話していた。

　その後、台湾台北地方検察署（地検）が3日に抗告した。台湾高等法院（高裁）は4日、柯氏が本当に全く知らず、疑いを持たなかったのか追求する必要があるとして、地裁に審理を差し戻した。

台湾民衆党、崩壊の危機

　台湾民衆党は5日、賄賂の証拠なしに図利罪の容疑をかけるなど、司法の公正性が損なわれていると批判した。黄国昌・立法委員（昨年11月に入党）は、柯氏の潔白を証明するだけでなく、新たな権威主義との戦いで、長期戦になると語った。台湾民衆党の報道官は、緊急応変チームが対応を集団決定し、主席の代理は立てないと説明した。

　柯氏は抗告しなければ、最長2カ月、延長で最長4カ月、勾留される可能性がある。図利罪で有罪となれば、懲役5年以上が科される。

　柯氏が結成した台湾民衆党は、8月6日に結党5年を迎えたばかり。白をシンボルカラーにクリーンな政治をアピールし、青（国民党）か緑（民進党）の対立に辟易（へきえき）した若者の支持を取り込んできた。今年1月の選挙では、柯氏は総統選挙で敗れたものの、立法院（国会）に立法委員8人を送り込んだ。高虹安・新竹市長（40歳、後に台湾民衆党を離党）が7月に横領で有罪の一審判決（8月に上訴）を受けたのに続き、カリスマ的存在の柯氏の汚職疑惑が発生し、一部支持者が離れつつあり、第三勢力の消滅を懸念する声も上がっている。

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